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2019.09.03

WING

装備庁の研究開発ビジョン、電子妨害技術など獲得

宇宙は多様な目標対処必要、民生技術を積極採用

 防衛装備庁は、中長期的な視点で先進的な研究を進めるための「研究開発ビジョン」を発表した。これは今後獲得するべき防衛装備技術の基本的な考え方と、技術的課題やロードマップを示した文書。領域横断作戦に必要な「電磁波領域」「宇宙を含む広域常続型警戒監視」「サイバー防衛」といった新しい領域とともに、従来領域の「スタンド・オフ防衛能力」なども含め、能力を獲得・強化する研究開発の方向性を示した。
 特に新領域の能力獲得・強化については、今後防衛省・自衛隊が獲得するべき技術として、「電磁波領域」で相手側の通信・レーダー・光波などの電子妨害技術が必要だとした。さらに電磁パルス(EMP)から電子機器を防護する技術などの必要性を示した。「宇宙領域」では多種多様な多数の目標に対応する必要性を強調。電波センサーおよび光波センサー技術を獲得して、高機能・高性能な分散探知を実現するほか、宇宙太陽光発電システム(SSPS)で活用される宇宙設置型大型アンテナ技術の必要性を示した。「サイバー分野」では、相手側のサイバー空間利用を妨げる能力が必要だとして、“妨げる能力”に資する技術の獲得に言及。さらに未然防止対策に関する研究開発では、先進的な民生技術を積極的に活用して、必要な技術を獲得するという。
 「研究開発ビジョン」では研究開発の前提に、厳しい財政状況下にあるとした上で、革新的な装備システムを実現するため、システム全体を俯瞰して構成する要素技術を特定。限られたりソースから効果的・効率的に要素技術を育成することが重要だとした。さらに先進的な民生技術の積極活用も重視する。加えて関係府省などとの連携、共同研究など、様々な手段を組み合わせて必要な技術を獲得するとのこと。また、民生技術の基礎研究を公募、資金を援助する安全保障技術研究推進制度による技術発掘・育成に努めるとした。迅速な研究開発のための取組みについては、高速滑空弾やUUVの開発で採用するブロック化、モジュール化をはじめとした合理化を進めて、研究開発機関の大幅短縮を図る。ライフサイクルを通じたプロジェクト管理を強化して、コストの管理・抑制を徹底する。防衛省では同ビジョンを積極的に企業側へ説明していくとして、企業側の自主的な検討と、重点的な先行投資を促し、企業側からの積極的な提案を期待するとしている。

 

防衛に幅広く関係する電磁波、EMP防護など課題

 

周辺で活発化する宇宙領域、効率的な警戒監視

 

サイバー領域で必要な「妨げる」能力

 

極超音速飛翔体技術で脅威圏外から対処

 

※図=研究開発ビジョンの実現イメージ(提供:防衛装備庁)