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陸上自衛隊の唯一無二の航空科部隊としての矜持
団として「一丸」となって多様な任務を遂行していく
陸上自衛隊の持つ最大の航空科部隊である第1ヘリコプター団。今回はその第1ヘリコプター団長の酒井秀典陸将補にインタビューを実施し、指導方針から第1ヘリコプター団の任務、そして2020年3月に暫定配備を要請中の陸自V-22オスプレイについても話を聞いた。
酒井団長に、第1ヘリコプター団長としての心構え及び指導方針について聞くと、第1ヘリコプター団は有事平時を問わず真っ先に投入される部隊であることから、上級部隊である陸上総隊司令官の統率方針でもある「即動必遂」の下、「日頃からいつ何が起きても即動し、必ず任務を完遂するという心構えで勤務している」と力強く答えた。また統率方針としては、部隊の特性を踏まえ「即動必遂」できる精強な部隊に必要なことは何かを考えた上で、「第1ヘリコプター団は、多種多様な航空機を持ち、任務も様々だ。その中で、団として一丸となって有形・無形の力を発揮し任務を遂行していくという姿勢が、部隊の精強化の原点だと考える」として、「一丸」を着任時に掲げたと話す。
また、「部隊活動において核心となるのは任務であり、隊員は指揮官、幕僚、操縦士、整備員、通信員等といったそれぞれの役割を担い、任務に応じて自分の役割、達成すべき目標を考えることが重要」と、隊員各人がその職責について自ら考察することの重要性を指摘。「様々な事情で誰かが欠けても代わりの者が、または(部隊との)連絡が途絶えても、それぞれが部隊の任務、自らの役割を考えて行動することにより、困難に直面しても任務を達成できる」と述べた。
広範多岐にわたる第1ヘリコプター団の任務
他の航空科部隊を牽引する役目も担う
地域との交流を深め、「信頼される駐屯地」に
隊員一人ひとりが広報マンという意識で勤務
陸自V-22オスプレイの戦力化が重要
ちなみに、2020年3月に暫定配備する予定となっている陸自V-22オスプレイについては、「報道でも出ているが、北関東防衛局が木更津市に対し暫定配備への説明を行い、木更津市の方で受け入れの可否をめぐって検討をしており、合わせて地域住民の方々へ丁寧に説明を行っている状況であると承知している」と述べて、「現場の部隊としては、最終的に木更津市が暫定配備を受け入れ、駐屯地への暫定配備が決定された以降、速やかに受け入れる準備を進めていかなければならない、またどこに配備されるにしろ、部隊の戦力化の準備はしっかりと進めていかなければならないと考えている」として、駐屯地としては木更津市の受け入れが前提としながらも、戦力化の準備を進める必要性を説明した。
また、陸自V-22オスプレイが仮に木更津駐屯地に、もしくは第1ヘリコプター団隷下部隊として配備された際、第1ヘリコプター団の任務・活動に変化が生じるか問うと、酒井団長は「第1ヘリコプター団の任務や活動については、(木更津駐屯地に)陸自V-22オスプレイが配備され、隷下部隊に入ったとしても大きく変わらない」と述べた。「ただ、陸自V-22オスプレイの能力は非常に高いので、関係部内外からの期待値は高まると考えており、行動範囲も広いので部隊運用の要領は変化すると思う。」と指摘しつつ、「陸自V-22オスプレイ自体は南西(諸島方面)への水陸機動団等の迅速な空輸の役割も担っているので、南西正面への役割がより重点を置かれ、焦点になってくるかもしれないが、いずれにせよ、島嶼部に対し、非常に足の長い(航続距離の長い)航空機として、様々な場面で活躍する機会はある」と考えを明かした。
さらに、「(第1ヘリコプター団の)任務自体は変わらないが、陸自V-22オスプレイの足の長さ(航続距離)を考えると南西諸島方面だけでなく、小笠原諸島方面へも飛行可能であるので、有事・平時問わず活動のエリアが広がるし、迅速性も向上する」と述べ、部隊としての能力の拡大の可能性についても触れた。その上で、「我々としては新たな装備(陸自V-22オスプレイ)を運用できるよう、戦力化(人材育成を含め)をしっかりと実施していかなければならない」と非常に有能な航空機としての能力発揮に期待しつつ、人材育成を含めた戦力化を着実に行う必要性を語った。
※写真=第1ヘリコプター団長の酒井秀典陸将補
※写真=第1ヘリコプター団の任務は広範多岐にわたり、国内のみならず、海外にも部隊を派遣している。こうした点から、陸上自衛隊の航空機運用では最先端を進む部隊と酒井団長は語る
※写真=第1ヘリコプター団の隊員は、唯一無二の部隊の隊員として矜持をもって取り組んでいる
※写真=米国で訓練が行われている陸上自衛隊のV-22オスプレイ(提供:陸上幕僚監部)