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ロールス・ロイス、次世代軍用エンジンは「空に浮かぶ発電所」
英将来戦闘機構想「テンペスト」エンジンに求められる3要素とは?
ロールス・ロイス防衛部門防衛部門事業開発・フューチャープログラム担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントのアレキサンダー・ジノ氏が取材に応じて、英国の将来戦闘機構想「テンペスト」に搭載するエンジンについて、「我々の認識からすると、空に浮かぶ発電所」との認識を示した。
ジノ氏は将来戦闘機構想「テンペスト」について、「あくまで取り組みの初期段階にある」と前置きした上で、搭載エンジンとしては「3つの要素を考えなければならない」ことに言及。その3つの要素とは、「小型のコア(スモールコア)、電力(パワージェネレーション)、熱制御(サーマルマネージメント)」であることを明らかにし、「コアは小さく、電力は大きく、熱が必要以上に発生しないようにする管理が必要。それが将来の姿」であることを強調した。
そもそも「テンペスト」とは、日本の航空自衛隊でも運用が始まっているF-35戦闘機といった、いわゆる”第5世代機”の次の世代の戦闘機のコンセプトとして英国が打ち出した将来戦闘機構想だ。2018年7月のファンボロー国際航空ショーで発表された「テンペスト」には、英国では英空軍とBAEシステムズ、ロールス・ロイス、レオナルド、MBDAなどといった官民一体の体制が構築されており、ほかにもイタリア、スウェーデンといった各国が同プログラムへの参加を表明するなど、広がりをみせている。
エンジンはロールス・ロイスがそのエンジン構想を打ち出していて、さながら全く新しいターボファンエンジンとなる様相だ。
ジノ氏は「機体サイズによって、エンジンサイズは影響を受ける。すなわち重量出力比が非常に重要」との見解を示しつつ、「スモールコアという言い方をする場合もあるが、素材なども含めて、温度を一気に上昇させながらも、なおかつコア部分は小規模に保つような技術が必要だ」と話した。
ロールス・ロイスの構想の一端を読み解くと、このエンジンは軽量で3次元流形状の複合材製のファンを装備し、そのファンの前方には固定ベーンを設ける。低圧コンプレッサーと高圧コンプレッサーの間をかなりあけているが、この部分に補器を収めることで、エンジン全体の直径を小さくする。
従来ならば補器類はエンジン下方の外側に取り付けており、そのためエンジン・システム全体の直径が大きくなっていた。一方で「テンペスト」のエンジン構想ではスターター・ジェネレーターを中に組み込む形にして、エンジン直径をコンパクトなものとし、これにより正面面積の低減を図り、最終的にはステルス性の確保にも繋げるようだ。
ちなみにファンは空気の乱流に強いファン・システムを設計とする方針で、そのファンに用いる材料はより軽量で耐熱性の高い素材を用いる方針だ。
ジノ氏が3つの重要な要素に挙げている発電、熱制御については、インテリジェントなエンジン制御を行う。
ジノ氏は「従来から言われてきた課題であるが、・・・
日本企業との協力、「自然な流れ」
素材・電気・生産技術などで協業期待
民間機分野、日本から年1000億円規模の調達
日本市場で増すロールス・ロイスの民間・防衛製品群
※写真=英将来戦闘機構想「テンペスト」でロールス・ロイスはエンジン分野で参画。「テンペスト」は未だ構想の域を出るものではないが日本企業との協業が実現するか
※写真=ロールス・ロイス防衛部門顧客及び政府関係担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントのアレキサンダー・ジノ氏(右)とロールス・ロイス・ジャパンの露久保治彦社長(左)