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2018.06.27

WING

2018年度防衛中央調達見込、FMSが4000億円超

F-35AなどFMS調達機が継続、総額は現時点で減額

 防衛装備庁は6月26日、2017(平成29)年度中央調達実施概況と2018(平成30)年度中央調達見込を発表、この中で米政府と契約するFMS(有償援助契約)が前年度実績30308億円から今年度見込4036億円と更に増加することが明らかとなった。これは前年度同様のF-33A、V-22などの機種のFMS契約が予定されているためだ。中央調達の総額は補正予算が含まれるため単純比較できないが、現時点での2018年度中央調達見込額は1兆4508億円と2017年度実績額1兆5764億円を下回っている。
 2017年度の契約実績でFMS契約による大型契約は陸幕要求のティルト・ローター機(V-22)1式709億円、空幕要求のF-35A戦闘機1式940億円、E-2Dの取得1式248億円、E-767の情報処理能力等の向上1式219億円、新たな空中給油・輸送機(KC-46A)の増勢(その3)1機、省統一要求の滞空型無人機(グローバルホーク)等の取得1式168億円などである。この5機種だけでFMS契約は2486億円となり、三菱重工の2017年度契約額2457億円に匹敵する。日本企業の調達上位20社(後述)の総額からはFMS分が引かれているので、防衛産業各社の苦しい状況が透けて見える。
 2018年度のFMS契約調達予定でも、ティルト・ローター機(V-22)、F-35A、E-2D、E-767の情報処理能力向上、空中給油・輸送機(KC-46)、滞空型無人機等と前年度と同じ機種の調達が予定されている。
 装備品目別(装備庁調達事業部担当別)のうち、航空機調達官(国産固定翼関連)、航空機部品器材室(国産部品関連)、回転翼室(国産ヘリコプタ-関連)実績と見込は次のようになっている。
▼航空機調達官=昨年度実績1377億円、今年度見込1121億円
▼航空機部品器材室=同311億円、同337億円
▼回転翼室=同977億円、同231億円
 国産固定翼機の調達契約は2018年度はC-2輸送機のみ、国産回転翼機はSH-60、CH-47ともまとめ買いとなったため今年度は本機の契約がなく、大きく減少している。
 航空関連の官・室以外でも一般輸入の輸入調達官が輸入航空機部品、機器の調達を予定しており、搭載電子機器には電子音響調達官や誘導武器室で調達されるものも多く、航空機全体としての調達予定額は個別情報を積み上げないと出てこないため、速報的に航空関連の3官・室の金額を示した。
 調達要求元別では、対前年度増減がまちまちになって来ている。2018年度は海幕が4963億円(増)と最も多く、次いで空幕が4583億円(減)、陸幕が3206億円(減)、装備庁が1080億円(増)、統幕が523億円(増)、防医大16億円(増)、防大9億円(増)、地方防衛局7億円(減)、内局3億円(減)、監察本部900万円(増)、防研200万円(減)となっている。

契約上位20社上位は変動少なく
まとめ買いやPBLで変動の会社も

 2017年度の中央契約上位20社(FMSを除く)では、三菱重工が1位、川崎重工が2位などほぼ例年通りに見えるものの、過去5年間10位以内にあったIHIが100億円で18位と下がった。これはヘリコプターエンジンのまとめ買いによる変動のためである。このほかにも例年20位以内にあったSUBARUが今回は20位圏外となっている。その他、海自のC-130R輸送機の機体維持業務(PBL)契約115億円を受注した日本飛行機が契約額129億円で13位(前年度は114位)、次期飛行点検機(サイテーション)の一般輸入契約のあった兼松が122億円で15位(前年度は561位)など、個別的な案件の獲得でランクアップするものが散見された。これらはただし、中央契約(防衛装備庁契約)によるもので、IHIなどは修理用航空エンジン部品の補給処契約が数百億円もあるなど、防衛省契約全体の見える化が必要とも言える。
 2017年度中央調達上位20社は次のとおり。
▼1位=三菱重工業、2457億円、機動戦闘車、戦車、潜水艦、SH-X、SSM改および哨戒機用ASM
▼2位=川崎重工業、1735億円、CH-47JA、MCH-101維持包括契約、C-2など
▼3位=日本電気、1177億円、空自クラウドシステム(指揮統制サービス)、新可変深度ソナー、Xバンド衛星中継器など
▼4位=三菱電機、957億円、03式中SAM改善型、訓練用電波妨害装置、新艦対空誘導弾開発
▼5位=東芝インフラシステムズ、632億円、電波監視装置、11式短SAM、P-1用捜索レーダー、基地防空用SAMなど
▼6位=富士通、479億円、中央指揮システムの中央システム統合共通用機器1の借上などシステム機器借上
▼7位=小松製作所、280億円、120ミリ戦車砲弾、105ミリ砲弾、大型航空機牽引車
▼8位=沖電気工業、226億円、将来潜水艦用ソーナー研究試作、ZQQ-8潜水艦ソーナー、電交システム器材借上
▼9位=日立製作所、200億円、掃海艦ソーナー、空自クラウドシステム(セキュリティサービス)、情報本部共通基盤プログラム開発
▼10位=JXTGエネルギー、193億円、航空タービン燃料JP-4、JP-5、JetA-1
▼11位=三井造船、189億円、音響測定艦、情報収集用ROVなど
▼12位=ジー・エス・ユアサテクノロジー、142億円、潜水艦用主蓄電池29SS用、同維持用など
▼13位=日本飛行機、129億円、C-130R期待維持業務、P-3C機体定期特別修理、将来軽量橋梁構成要素の研究試作
▼14位=中川物産、122億円、艦船用軽油、航空タービン燃料JetA-1
▼15位=兼松、122億円、次期飛行点検機、重油
▼16位=ダイキン工業。106億円、81ミリ迫撃砲弾、120ミリ翼安定徹甲弾、120ミリ戦車砲演習弾
▼17位=日本製鋼所、103億円、99式自走榴弾砲、105ミリ砲、ミサイルキャニスター
▼18位=IHI、100億円、F135-PW-100エンジン下請生産業務委託、P-3Cエンジンオーバーホール
▼19位=ジャパンマリンユナイテッド、100億円、掃海艦
▼20位=住商エアロシステム、98億円、水陸両用車人員輸送型、同指揮通信型、同回収型

※写真=F-35A戦闘機のFMS契約が続く。三沢に向けてフェリー中のF-35A(提供:米国防省)