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2021.08.13

WING

第132回 日本が危ない! どうする、離島からの住民避難

台湾有事は尖閣有事に直結
取り組むべき住民避難進まず

 

 米インド太平洋軍の司令官だったフィリップ・デービッドソンは3月の米議会公聴会で、中国軍が6年以内に台湾を侵攻する可能性を指摘した。台湾有事は尖閣諸島(沖縄県石垣市)の有事に直結し、沖縄本島も戦場になるかもしれない。その時、自衛隊は国家・国民を守ることができるのか。国民に有事への備えが果たしてあるのか、われわれに突き付けられている課題だ。中でも島嶼防衛の際の住民避難は真っ先に取り組むべきにも関わらず、政府と地方自治体との調整は遅々として進んでいない。

 このほど出版された『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』(新潮新書)で、元陸上自衛隊トップと、元海上自衛隊トップによる激論が、防衛関係者の間で注目されている。問題提起をしたのが元海幕長、武居智久だった。
 「陸上自衛隊は守ることに集中しすぎているのではないか。将来日本が関係する戦争では小さな島嶼ばかりでなく第一列島線の一部まで敵国の攻撃に晒され、場合によっては奪取されるか、領土は取られなくても海空域の支配権を敵国に渡す事態が想定できる。そのときは一度大きく下がって十分な準備を整えてから攻め上がってくる作戦が必要となる。取られたら取り返すダイナミックな作戦が必要で、想定される戦域はおそらくフィリピン海を中心とする西太平洋になるでしょうし、そんなとき自衛隊はどこを起点としてどのように作戦をするのか。領土を奪われないことは当然のことながら、奪われた場合には一度下がってからロールバックする。そういった作戦をあらかじめ想定しておかないといけない戦略環境になっている」

 

絶対に撤退できない陸自
地元に残る大戦末期の不満

 

 反論したのが元陸幕長、岩田清文だった。2人は共に1957(昭和32)年生まれ。1979(昭和54)年防衛大学校第23期卒業の同期で日頃は仲がいいが、武居の提起には「絶対に同意できない」と反論した。

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