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新大綱・中期防、新領域と「多次元統合防衛力」構築
「いずも」型護衛艦へF-35B運用機能を追加
2019年度以降の防衛計画の大綱および2019~2023年度の中期防衛力整備計画が12月18日、閣議決定された。新大綱では、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を重視して、統合機動防衛力の方向性をさらに深化。従来の陸・海・空とともに、全領域の能力を有機的に融合できる「多次元統合防衛力」を構築する。さらに、現有艦艇からの短距離離陸・垂直着陸可能なSTOVL機運用を示して、周辺海空域での対処能力強化に言及する。新中期防では、今後5年間の整備としてF-35Aを45機調達するとし、そのうち18機をF-35Bとする。海上自衛隊の多機能ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」型を改修して、同護衛艦へSTOVL機運用という新たな機能を追加する。
今後5ヵ年の自衛隊の整備計画を示す新中期防では、計画に必要な防衛力整備金額は、2018年度価格でおおむね27兆4700億円を見込む。これに、一層の効率化・合理化を徹底するとして、重要度の低下した装備品の運用停止、費用対効果の低いプロジェクト見直し、コスト管理・抑制の徹底、長期契約の装備品の効率的な取得のほか、その他収入の確保などによる財源確保を図ることで、おおむね1兆9700億円を削減して、25兆5000億円を目途とする。さらに、このところ増えつつある新規後年度負担に歯止めをかけるため、事業に関係する契約額(物件費)を明示。2019年度以降5年間の契約額をおおむね17兆1700億円の枠内として示し、後年度負担を適切に管理することとしている。
■新大綱、あらゆる領域を有機的に融合
個別の能力の相乗効果、段階によらず「常続監視」
《大綱別表》
(共同の部隊)
▼サイバー防衛部隊:1個防衛隊
▼海上輸送部隊:1個輸送群
(陸上自衛隊)
▼編成定数:15万9000人
・内、常備自衛官定員:15万1000人
・内、即応予備自衛官員数:8000人
▼基幹部隊=
・機動運用部隊:3個機動師団、4個機動旅団、1個機甲師団、1個空挺団、1個水陸機動団、1個ヘリコプター団
・地域配備部隊:5個師団、2個旅団
・地対艦誘導弾部隊:5個地対艦ミサイル連隊
・島嶼防衛用高速滑空弾部隊:2個高速滑空弾大隊
・地対空誘導弾部隊:7個高射特科群/連隊
・弾道ミサイル防衛部隊:2個弾道ミサイル防衛隊
※戦車及び火砲の現状(平成30年度末定数)の規模は、それぞれ約600両、約500両/門であるが、将来の規模はそれぞれ約300両、約300両/門とする。
(海上自衛隊)
▼基幹部隊=
・水上艦艇部隊
内、護衛艦部隊:4個群(8個隊)
内、護衛艦・掃海艦艇部隊:2個群(13個隊)
・潜水艦部隊:6個潜水隊
・哨戒機部隊:9個航空隊
▼主要装備=
・護衛艦:54隻
内、イージシステム搭載護衛艦:8隻
・潜水艦:22隻
・哨戒艦:12隻
・作戦用航空機:約190機
(航空自衛隊)
▼基幹部隊=
・航空警戒管制部隊:28個警戒隊、1個警戒航空団(3個飛行隊)
・戦闘機部隊:13個飛行隊
・空中給油・輸送部隊:2個飛行隊
・航空輸送部隊:3個飛行隊
・地対空誘導弾部隊:4個高射群(24個高射隊)
・宇宙領域専門部隊:1個隊
・無人機部隊:1個飛行隊
▼主要装備=
・作戦用航空機:約370機
内、戦闘機:約290機
※戦闘機部隊13個飛行隊は、STOVL機で構成される戦闘機部隊を含むものとする。
《中期防整備規模》
(陸上自衛隊)
▼機動戦闘車:134両
▼装甲車:29両
▼新多用途ヘリコプター:34機
▼輸送ヘリコプター(CH-47JA):3機
▼地対艦誘導弾:3個中隊
▼中距離地対空誘導弾:5個中隊
▼陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア):2基
▼戦車:30両
▼火砲(迫撃砲を除く):40両
(海上自衛隊)
▼護衛艦:10隻
▼潜水艦:5隻
▼哨戒艦:4隻
▼その他:4隻
自衛艦建造計:23隻、(トン数):約6.6万トン
▼固定翼哨戒機(P-1):12機
▼哨戒ヘリコプター(SH-60K/K(能力向上型)):13機
▼艦載型無人機:3機
▼掃海・輸送ヘリコプター(MCH-101):1機
※哨戒ヘリコプターと艦載型無人機の内訳については、「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱」完整時に、有人機75機、無人機20機を基本としつつ、総計95機となる範囲で「中期防衛力整備計画(平成31年度~平成35年度)」の期間中に検討することとする。
(航空自衛隊)
▼早期警戒機(E-2D):9機
▼戦闘機(F-35A):45機
▼戦闘機(F-15)の能力向上:20機
▼空中給油・輸送機(KC-46A):4機
▼輸送機(C-2):5機
▼地対空誘導弾ペトリオットの能力向上(PAC-3MSE):4個群(16個高射群)
▼滞空型無人機(グローバルホーク):1機
※戦闘機(F-35A)の機数45機のうち、18機については短距離離陸・垂直着陸機能を有する戦闘機を整備するものとする。
※写真1=「いずも」型護衛艦は、改修によりF-35Bの運用が可能となって、多用途を維持する(提供:海上自衛隊)
※写真2=中期防で18機導入するF-35B(提供:ロッキード・マーティン)