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2019.02.07

ウイングトラベル

DMOによる情報発信のあり方で議論紛糾

観光庁の有識者会議、役割分担で意見対立

 観光庁が2月6日に開催したDMOに関する有識者会議で、中間とりまとめへ向けた論点整理やDMOに求められる主な機能と地域/広域DMO、JNTOといった各階層の分担イメージに関する素案などが示されたが、観光情報の発信に関して、DMOは観光資源の磨き上げに特化すべきという意見が出る一方で、DMOが行っているプロモーションで成功事例が出ている中で役割分担から排除すべきではないといった意見が対立するなど議論が紛糾した。
 「世界水準のDMOのあり方に関する検討会(座長:矢ケ崎紀子東洋大学国際観光学部国際観光学科教授)」の第5回会合では、地域の観光振興に対する役割分担のあり方について有識者委員からさまざまな意見がだされた。
 今回の検討会では、観光庁からDMOに求められている機能として「来訪者の満足度向上に向けた取り組み」「域内事業者のビジネス機会創出支援」「観光人材の研修・育成、地域住民への啓発」「マーケティング」「情報発信」「持続可能な観光地域づくり」「外国人旅行者への非常時の情報提供」の7つを示した上で地域の観光振興において地域DMO、広域DMO、自治体、JNTO(日本政府観光局)のどの組織が主体性を持った取り組みを行っていくべきかという点についてたたき台を示した。

 

 アトキンソン氏「DMOによるプロモ制限を」
 近大高橋教授「JNTOへの一元化納得できず」

 この中で、情報発信について観光庁からは、各階層の重複排除や最適化を図る上で、JNTOがメーンで行い、広域DMOや地域DMOが補完するといった役割分担を提案した。
 これを受けて、デービッド・アトキンソン委員(小西美術工藝社社長)は「DMOがやるべきことは眠っている観光資源を磨き上げてしっかり商品化までこぎ着けるということ。この部分についてはDMOの定義として明確にすべきであると考える。今のDMOは観光プロモーションやPRコンテンツ作りへの取り組みに力を入れているようだが、外国人旅行者の目にも届いてなく、無駄なものが多い。今後5年間くらいは国の補助金も使いながら観光資源の発掘や観光インフラへの設備投資に振り向けるべきだ。情報発信については、海外の事情や外国語に理解がある人に任せたほうがよい。原則としてDMOには情報発信を禁止にして、ブランディングなどについてはJNTOに一元化してもよいくらいだ」という意見を述べた。
 これに対して高橋一夫委員(近畿大学経営学部教授)は「観光情報の発信はそれぞれの地域でターゲティングを明確にした上で行うべきものであり、そうした取り組みをJNTOに一元化するという点については納得することができない」と反論した。高橋委員は「例えば瀬戸内地域は海外のメディアなどから訪れるべき観光地として高く評価されている。これはせとうちDMOが取り組んできたプロモーションの効果によるもので、情報発信をうまくできているDMOは存在する」と指摘した。さらに「DMOの役割として、観光資源の開発に積極的に取り組んで行くべきという点については賛成だが、観光資源の磨き上げとパブリック・リレーションズが伴って初めて海外のメディアや旅行者の目にとまるのではないか」と述べ、DMOによる情報発信を全面的に制限すべきではないという考えを示した。
 これに対してアトキンソン氏は「せとうちDMOと同じような取り組みを他のDMOが行ったところで、外国人観光客が増えるとは個人的には思わないが、DMOによるプロモーションのあり方については、今後明確な効果検証をしていく必要があるだろう」と述べた。
 情報発信の役割分担については、他の委員からも今回示された問題提起を受けて、さらなる検討が必要ではないかという意見が示された。

 

 DMOのガバナンスや人材活用手法を明確に
 自治体の役割を切り離した施策構築も必要

 

※写真=「第5回世界水準のDMOのあり方に関する検討会」の模様