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2019.03.13

ウイングトラベル

テクノロジーの進化は旅行市場を変えるのか

JATA経営フォーラムの分科会で議論

 先日開催されたJATA経営フォーラムで行われた分科会の1つとして「テクノロジーが変える経営とツーリズムマーケット」をテーマにパネルディスカッションが行われた。今回のディスカッションでは、AI(人工知能)に代表されるテクノロジーの進化やデータドリブン(データ分析による未来分析や意思決定)が今後の旅行者の体験や旅行市場に与える影響をさまざまな事例を紹介しながら議論を行った。
 今回のパネルディスカッションには、日本マイクロソフトの伊藤かつら執行役員常務デジタルトランスフォーメーション事業本部長、ナビタイムジャパンの菊池新取締役副社長、トラベルボイスの鶴本浩司社長の3人がパネリストとして登壇、モデレーターはJTBの三島健Web販売部戦略統括部長が務めた。
 冒頭でモデレーターのJTBの三島氏は「デジタルと経営というものはもはや切り離せないものとなりつつある。そうした中で、JTBとマイクロソフトと訪日旅行者向けの新サービスの実現について打ち合わせをしていたところ、ミーティング中にマイクロソフトのエンジニアが打ち合わせ内容を反映して試作版を作り、デモを見せてくれた。このやりとりを見て、これからデジタルを活用して事業を展開する上では相当なスピード感を持って取り組んで行かなくてはならないと感じさせられた。そうしたことから、テクノロジーの進化がどのように進んでおり、これにいかに迅速に対応していくべきなのかということを中心に議論していきたい」と述べ、ディスカッションがスタートした。
 パネリストからは、まずはそれぞれの経験を基にテクノロジー進化を取り巻く現状に関して解説を行った。
 トラベルボイスの鶴本氏は「OTA事業者は旅行業者ではなくテクノロジー企業として事業を進めている。新規参入事業者は最初にアイデアありきで事業を立ち上げて、後から中身を精査して事業を推進する」と指摘した。
 マイクロソフトの伊藤氏は、デジタル技術が新たな価値を生み出す「デジタルトランスフォーメーション」の動きについて、建設機械メーカーの事例などを挙げながら紹介。そうした中で「顧客との関連性をデジタルで強めていこうとしているというのが、今のデジタルトランスフォーメーションの流れである」という考えを示した。さらに「デジタル技術の進歩やAIの登場により、人間がやることがなくなると危惧している声をよく聞くが、人が介在する仕事の内容が変わるだけなのでAIは人間を脅かす存在となるわけではない点を理解してもらいたい」と指摘した。
 ナビタイムの菊池氏は、ルート検索や乗り換え案内、周遊旅行プランの造成といった自社のサービス内容を説明した上で、デジタル技術の進化について紹介した。菊池氏は「移動手段が多様化してきていたり、情報量が既存のCPUでは処理できないほど膨大となりつつある中で、プロトタイプを試して、ユーザーからフィードバックをもらい、改善していくというサイクルをより早めていかなくてはならない」と指摘した。

 

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※写真=「テクノロジーが変える経営とツーリズムマーケット」をテーマに議論が行われたJATA経営フォーラムの分科会。写真左端はモデレーターを務めたJTBの三島健Web販売部戦略統括部長