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F-15X予算案盛り込みで新生F-15現実化へあと一歩
航空自衛隊F-15能力向上とほぼ同時並行でシナジー期待
ボーイングが打ち出したF-15X構想が、大きな実を結ぼうとしている。米国防省が経年劣化したF-15C/Dの後継として、複座型のF-15EXについて、今年3月に発表した2020年の予算要求案に盛り込んだため。1980年代に初めて導入された米空軍のF-15Eは最新鋭のレーダーや電子戦などを搭載して、新たな時代の安全保障環境を担おうとしている。
本紙らの取材に応じたボーイング幹部はF-15EXについて、「今まで諸外国向けに採り入れてきた技術もベースラインとして活用しつつ、その後に誕生した新技術も取り込んで機体を製造する。それにより経費の削減を図り、かつ機体寿命の延長も進めていく」機体とする方針を明かした。この幹部によれば、F-15EXが正式化すれば、「米空軍と契約を締結後、セントルイスで生産をスタートする」とのことで、「この機体は再生機ではなく、新造機として生産することになる」ことを明かした。
ちなみに、米国防省の予算案では2020年に8機分の購入費用として10億5000万ドルを計上。20年度以降、5年間で80機分を調達する見込みだ。ただ、依然として米空軍内部でも第4世代機のF-15は第5世代機のF-35にはなれないなど、F-15EX導入に反対する意見も根強いことのほか、調達コストがなかなか落ちて来なかったロッキード・マーティンのF-35が、ここに来てロッキード側が価格を落とす提案に踏み切る動きをみせるなど、ボーイングとしても依然楽観視することはできそうにない。
日本の航空自衛隊はF-15C/DをベースとするF-15J/DJを計201機保有。F-35Aの部隊配備が進みつつあるとはいえ、日本の空の安全を担う主力の一翼を担っている。このF-15J/DJは、段階的に能力向上を図った、いわゆるMSHIP機と未改修機が混在している。政府が昨年12月に発表した中期防衛力整備計画には、MSHIP機20機分の更なる能力向上改修が盛り込まれており、日本周辺が騒がしさを増すなかで、F-15の能力向上を図ることで、周辺事態への対応力を高めることにした。
このボーイング幹部も「米空軍のF-15EX事業と同時に、日本のF-15能力向上がタイミング的にも同時進行で進む。我々としてもこれこそ日米のアライアンス強化の一環として、大きく寄与することができるのではないかと捉えている」とこコメント。その上で、米空軍のF-15EXプログラムと航空自衛隊のF-15能力向上などを通じて、「日米は現在および将来の脅威、または全世界の脅威に対して共同で対応していくことができるのと考えている」とし、米空軍、航空自衛隊が同時並行的にF-15フリートをアップグレードに取り組むことによるシナジー効果は大きいと期待を寄せた。
F-15Xはどのような機体か
最新ミッションコンピュータ搭載、1秒間870億回計算
最大2万9500ポンドもの兵装搭載
米空軍の課題、戦闘機体系維持のソリューションに
F-15Xの諸外国に対する輸出も狙う
現F-15ユーザーのみならず引き合い多数
※画像=米国防省は経年劣化したF-15C/Dの後継として、複座型のF-15EXについて、今年3月に発表した2020年の予算要求案に盛り込んだ(提供:ボーイング)
※画像=最大で2万9500ポンドもの兵装を搭載可能で、空対空兵装を搭載可能なハードポイントが12ヵ所、空対地搭載可能なハードポイントが15ヵ所設ける等、大量の武装を搭載できる(提供:ボーイング)
※画像=世界トップラスのミッションコンピュータを搭載。次世代型の先進コクピットシステムを備え、パイロットのワークロードを軽減する(提供:ボーイング)
※画像=ボーイング幹部は米空軍、航空自衛隊が同時並行的にF-15フリートのアップグレードに取り組むことによるシナジー効果は大きいと期待を寄せた(提供:ボーイング)