記事検索はこちらで→
2018.05.14

ウイングトラベル

Webファーストで20年度にWeb販売比率5割に

KNT-CT新3カ年計画、3年間でIT投資94億円

 KNT-CTホールディングスは、2018年度〜2020年度の3カ年の中期経営計画を発表した。売上高と利益の拡大を基本目標に掲げ、「Webファースト」への転換により、Web販売比率を17年度の27.5%から20年度には50%まで高めるとして、今後3年間で約94億円をITシステム投資に充てる。また、近畿日本ツーリストとクラブツーリズムを一体化し、ウェブサイトや仕入れ、顧客データベースを統合し、個人旅行事業を再構築するほか、2020年東京大会に向けた団体旅行事業の拡大強化などにより、計画最終年度の2020年度に売上高4560億円(17年度比508億円増、12.5%増)、営業利益55億円(同比23億円増)、経常利益57億円(24億円増)、当期純利益34億円(20億円増)の達成をめざす。
 会見した丸山隆司KNT-CTホールディングス社長は、「ウェブ販売チャネルをもっと早い段階で取り入れなければならなかった。事情があって遅れたが、遅ればせながらにやりたい。また、ウェブチャネルを拡大するが、商品が同じならOTAに勝てない。主戦場は単品売りではなく、クラブツーリズムが得意とするようなテーマ性の高い商品。価値で勝負したい」との見解を示した。
 また、「それだけで勝てるとは思っていない」とも述べ、クラブツーリズムが有する会員の顧客データベースを最大限活用。クラツーとKNTの両社合わせて1000万人弱の会員がおり、「これを1200万人強にしたい」として、それらの優良顧客に対して、店舗販売、会報誌『旅の友』での販売に加えて、Web販売を大幅に拡大し、「会員を中心にWebで商品を買ってもらう。これが一番の骨子だ」と述べた。KNT-CTグループのファンとも言える会員をさらに増やし、Web販売によってより購入しやすい環境を整える方針だ。
 計画最終年度の2020年度に掲げる売上高4560億円、経常利益57億円の目標については、「挑戦的な目標だが、絶対に達成したい。それを実現するのがシステム投資だが、逆に言えば、これぐらいの売上高を出さなければIT投資の固定費や減価償却費をペイできない」として、投資分を回収するためにも売上高を引き上げていくことが必要との見解を示した。
 丸山社長は、「今まであまりにもWebへの認識が低すぎた。社員もようやくWeb販売をしようという意識になってきた」と手応えを示した。また、「これだけメイト・ホリデイが落ちているにも関わらず、相当な売上がある。それはつまり、我々のブランドを安心安全だと高く評価してくれる顧客がいるということだ」として、「ブランドを信頼してくれている顧客に対し、もっと手近にWebで買って頂きやすい環境を整える」として、販売チャネルの一つとしてWeb販売環境を整備すると説明。その上で、150店舗の店舗網についても「維持する」と断言した。

 

 KNT-CTの仕入れ、顧客データ、サイト統合へ
 旅連など3団体を来春統合、4000軒の新団体に

 KNT-CTホールディングスは、事業構造改革によりこの4月より新体制に移行。また、昨年6月には丸山新社長を迎え、前中期計画(16〜18年度)の見直し作業を進めてきたが、今回新たに18〜20年度までの3カ年計画をとりまとめた。
 新計画の基本目標は売上高と利益の拡大。基本方針は、全国にある地域会社ですべての旅行関連需要の獲得をめざすほか、Web販売、訪日旅行、東京を中心としたMICEの3つの専門会社で専門領域を深化させ、販売拡大を図る。
 具体的な施策については、「個人旅行事業の再構築」と、「団体旅行事業の拡大・強化」の2本柱に分けてとりまとめた。
 「個人旅行事業の再構築」では、基本方針として、Webファースト、近畿日本ツーリストとクラブツーリズムの一体化の2つを掲げた。
 Webファーストでは、「ウェブを業務の基点として、意識をウェブ優先とする。パンフレットの作成もウェブと同時に行うなど、業務効率を向上させる」(西崎一専務取締役)。
 Web販売に適合した商品の拡充については、「ウェブ購入時にわかりやすい商品、最小クリック数で買いやすい商品など、あくまでシームレスを求める」(西崎専務)ほか、販売面でもパンレット販売からWebファーストへの転換を図り、リアル店舗でもWeb商品を販売する。
 商品面では、クラブツーリズムが得意とするテーマ性の高い商品の開発も強化する。
 一方、150店舗を維持するとした店舗販売については、近畿日本ツーリストの商品に加えて、クラブツーリズム商品の販売拡大を強力に進める。上述の通り、リアル店舗でもWeb商品を販売する。既に、クラブツーリズム商品の店頭販売を開始しているが、過去の購入履歴をみながら店頭で接客販売できる体制も整えたという。
 KNT-CTグループとして、仕入れの統合も図る。その一環として、「近畿日本ツーリスト協定旅館ホテル連盟」、「近畿日本ツーリスト全国ひまわり会」、「クラブツーリズムパートナーズ会」を来年4月をめどに統合する。旅連で約2500、ひまわり会で約750、パートナーズ会で約2500の会員がおり、重複を除けば計約4000軒の新団体となる。
 西崎専務は団体の一本化について、「旅館やホテルからみると、KNTとCTは一本化していない。名実ともに仕入れも顧客データベースもウェブサイトも統合していく前段階として、(団体の統合も)やっていかないと筋が通らない」として、「一つの象徴的な出来事として統合したい」との見解を示した。
 ITシステムの開発・改修については、機能やデザインの刷新を含めてユーザビリティ向上を図るほか、近畿日本ツーリストとクラブツーリズムのサイトを統合して顧客誘導を図る。顧客データベースも統合する。サイトの統合については、計画最終年度の2020年度を予定している。
 顧客データベースの統合に伴いマーケティングも強化し、確度の高いデータ分析に基づく顧客へのアプローチを強化する。
 このほか、訪日分野ではFIT事業を強化し、国内ツアー、日帰り、宿泊商品の転用による商品拡充を図り、Web販売を拡大する。
 

 

 団体旅行事業の拡大強化へ、東京オリパラ活用
 訪日や地域交流など成長領域、教育旅行も強化

 「団体旅行事業の拡大・強化」では、東京2020オリンピック・パラリンピックの取扱い拡大に向けて営業を強化。オリパラ終了後につながる顧客開発とアプローチを強化も図る。
 成長領域での新たな取り組みでは、訪日旅行、地域交流、スポーツ事業を成長領域に位置付け、これらの領域を掛け合わせた新たな需要を開発する。
 教育関連事業の領域の拡大については、「児童生徒数は減少傾向にあるものの、国際交流は活発化しており、国際交流イベントの領域にも積極的に出て行きたい」(西崎専務)として、既存の修学旅行に加えて、海外留学や全国大会・イベント等の需要取り込みを強化する方針だ。
 また、団体基幹システムの活用では、団体の営業マンが各種データや業務をデータ化し、システムによる進捗管理を行うもので、既に稼働しているが、マーケティング機能を強化して業務効率化による生産性向上を図る。

 

 ITシステム投資94億円、新規投資51億円規模
 投資増加で18年度減益も19年度から増益予想

 投資計画では、Webファーストへの転換、顧客データベースの充実を主軸とした個人旅行の再構築をはじめ、訪日旅行の拡大等にも寄与するシステム開発のため、計画期間の3年間合計で約94億円をITシステムに投資する。
 ITシステム投資約94億円のうち、新規システム投資は約51億円、既存システム投資は43億円。また、新規投資51億円のうち、ウェブサイト関連は22億円、基幹システムの再構築は22億円、顧客データベース関連は2億円、その他は5億円とした。
 年度別の投資額内訳は、2018年度に46億円、2019年度に17億円、2020年度に31億円としている。
 経営目標については連結ベースで、2018年度に売上高4170億円、経常利益29億円、2019年度に売上高4420億円、経常利益47億円、2020年度に売上高4560億円、経常利益57億円を目標に掲げた。
 18年度は売上高は前期比2.9%増の増収も、利益ベースでは営業利益で15.0%減、経常利益で13.2%減の減益を見込んでいるが、これはシステム投資による減価償却等の費用がかさむためとした。その上で、「Web販売システムが一応整備される2019年度には、各種施策で売上高が伸びると考えている」として、19年度から増収増益を達成できるとの見通しを示した。
 新3カ年計画期間中の連結経営目標は以下の通り。
《2018年度》
▼売上高=4170億円
▼営業利益=27億円
▼経常利益=29億円
▼当期純利益=22億円
《2019年度》
▼売上高=4420億円
▼営業利益=45億円
▼経常利益=47億円
▼当期純利益=27億円
《2020年度》
▼売上高=4560億円
▼営業利益=55億円
▼経常利益=57億円
▼当期純利益=34億円

 

※写真=丸山隆司KNT-CTホールディングス社長