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山口県沖F-2墜落、原因は出力不足と不十分な回復
F-2飛行特性など訓練・教育、前後席の連携向上など
航空自衛隊が6月21日に発表した、山口県見島沖のF-2B墜落事故の調査結果によると、墜落機は最小出力の状態から左上昇旋回を実施し、ほぼ垂直に機首を引き上げたことで速度を失った異常姿勢となったことが分かった。機体は、回復操作が行われるも背面姿勢の操縦不能状態に陥り、洋上へ墜落した。パイロット2名は、墜落直前に緊急脱出。それまでにも回復操作を試みたが、有効な回復操作に至らなかった。そのため空自では、パイロットに対して、飛行特性の教育および緊急手順の教育・訓練を徹底する。また飛行特性や操縦者の練度を踏まえた訓練管理を行うとして、さらに後席のManual Pitch Override(MPO)スイッチ配置の変更など、安全性向上に関する検討を行う。
同墜落事故は、去る2月20日に発生した。築城基地の第8航空団では1対1の対戦闘機戦闘訓練を実施中に、事故機となった2番機が操縦不能となって、パイロット2名が緊急脱出した。空自の事故経過説明では、事故機を操縦していた前席操縦者は訓練中、機体上方の対抗機(1番機)後方に付けるため、スロットルを最小出力にして左上昇旋回を行った。その後、右旋回へ切り返す際、ほぼ垂直に機首を引き上げたため、機首高で速度を失った異常姿勢となった。
異常姿勢の事故機では、後席パイロットから出力を上げるよう指示があり、出力を上げる回復操作を行ったが、出力不足のため背面姿勢の操縦不能状態となった。そのため、後席操縦者へ操縦を交替して、操縦不能状態からの回復操作を試みたが、機体は背面姿勢でスピンしながら落下。操縦桿をマニュアルモードにするMPOスイッチを押そうとしたが、身体が浮いて手が届かなかったため、前席操縦者へMPOスイッチを押すよう指示。しかし、このとき後席操縦者は、誤って別のスイッチを押すよう指示してしまったため、有効な回復操作が得られず、墜落に至ったとのこと。