記事検索はこちらで→
2019.06.24

WING

ANAHD株主総会に1972人参加、株価対策など質問

飲酒や787エンジン問題陳謝、20年成長へ課題解決

 ANAホールディングス(ANAHD)は6月21日に都内ホテルで定時株主総会(第74回)を開催し、提案した第1~4号議案がすべて可決された。今期総会は、株主が前年度よりも258人多い1972人が会場を訪れた。質問者数こそ前年より2人少ない14人だったが、開催時間が12分長い2時間26分で、グループの株価対策やネットワーク戦略などを中心とした説明に耳を傾けた。
 ANAHDが示した議案のうち、第1号議案は剰余金処分について。普通株式配当を前期より15円増配の1株75円とし、総額251億1515万1750円とした。第2号議案は取締役10名の選任で、辞任した取締役の篠辺修氏および石坂直人氏以外8名を再任。新任の上席執行役員として伊東裕氏、執行役員として福澤一郎氏を選任した。3号議案は、監査役の大川澄人氏任期満了で退任したため、新任の社外監査役として加納望氏を選任した。第4号議案は監査役報酬額の改定で、事業構造の変化を理由に、それまで月額1000万円以内としていた報酬を年額に改めた上で、総額1億8000万円以内とした。
 ANAHDは、問題となっている飲酒問題と、前期に欠航便発生の原因となった787エンジン問題に特に時間を割いて説明を行った。ANAHDの片野坂真哉社長は「多大な心配と迷惑をおかけした」と陳謝し、全日空(ANA)社長の平子裕志取締役は問題の概要を説明する中で「飲酒問題は航空業界全体の問題だ」とした上で、ANAグループの対策について述べた。
 ANAグループの飲酒問題は、ANAおよびグループ2社で発生し、これまでANAグループ対策委員会を立ち上げて対応してきたところ。主な対策は検査の厳格化と、意識改革のおおむね2点で、検査方法としては、乗務前の検査で少しでもアルコールが検知されれば乗務できないようにした。検知器は、より厳格に検査できる最新式のストロータイプに切り替え、第三者が立ち会う中で検査を行っていると説明した。
 乗務員の意識改革の取組みは、飲酒によって運航便の遅延や、安全性の毀損など、会社へ重大な影響を及ぼすことを意識させる。新しいビデオ教材による研修や、面談などを行って、航空機へ乗務する社員へ自覚を促す。また平子取締役は、航空業界全体の問題だと述べた上で、ANAHDが所属する定期航空協会でもアルコール問題を重要視しているとして、検査の改革、整備士や運航管理者への徹底に取り組んでいると説明した。
 787エンジンの不具合について平子取締役は「長らく心配をおかけした」と述べた後、総会の前から挙げられていた質問に回答した。2018年度に運航便の大量欠航を招いた787エンジン問題は、ANAが採用したロールス・ロイス製トレント1000エンジンのタービンなどで想定よりも老朽化が進んでいたため、安全を確保する点検・整備を頻繁に行う必要があったため。ANAでは、点検回数を増加させ、改良部品の導入が必要となるなど、安全を確保する取組みによって、欠航を余儀なくされた。
 787の導入に当たりGE社のエンジンではなく、ロールス・ロイス社のトレント1000を採用した理由については、767後継機として当初から国際線と国内線両方での運航を想定し、比較すると短・中距離を飛ぶ国内線の運航に適していたのはトレント1000の方だったと説明。平子取締役は、今年度末には保有する787エンジンの改修がすべて完了予定として、2020年度の首都圏空港増枠に触れて「ビジネスチャンス控え、今年度中に課題を解決したい」と話した。

 

片野坂社長、総会後の増資「計画はない」
米中貿易、イラン問題などが株価に影響

 

地方国際線ネット、万博開催など期待
APJ・VNL井上CEO「グループ傘下として価値向上」

 

騒音対策で新世代機更新進める
スカイマーク提携、将来の連携可能性を考慮

 

※写真=ANAHDの株主総会では、前期より258人多い1972人が参加した