ウイングトラベル
中南米旅行専門のウニベルツールが事業停止
負債額は調査中、ツアーは同業他社へ振り替え
東京商工リサーチ(TSR)によると、(株)ウニベルツール(渡辺淳二社長、東京都中央区銀座8-14-14、資本金4500万円)は7月19日付ですべての業務を停止した。負債額については現在調査中。TSRによると渡辺社長は「ツアー申込み者などの一般顧客はすでに同業他社への振替を済ませており被害はない」と話しているほか「今後については弁護士に一任している」としている。
なお、今週中にも破産申請するとの一部報道もあったが、TSRは現時点で破産を含む法的申請を行うかどうかについては確認していないとしている。
ウニベルツールはブラジルの旅行会社で勤務経験を持つ渡辺社長が1971年に設立。当初はブラジル日系一世の里帰り訪日団の受け入れ業務などを請け負っていたが、現在はブラジルを始め中南米地域を専門とする老舗の旅行業者として一定の知名度を有し、個人旅行のほか法人向けの渡航手配やビザ申請代行も手掛け大手商社などとの取引実績を有していた。
サッカーワールドカップブラジル大会の開催が追い風となり、2015年4月期には売上高約20億円を計上。さらに2016年にはリオオリンピックの開催なども追い風となり、中南米方面の渡航が好調に推移した。
しかし、オリンピック以降は中南米への関心が落ち着いたほか、現地の治安面への不安から利用客が減少。売上が低迷し厳しい状況が続く中、2019年6月17日から一部ビザ免除措置が適用され、同社の主要事業だったビザ申請代行での売上が見込めなくなった。
最近では今年6〜7月開催の「コパ・アメリカ2019(サッカー南米選手権)」の現地発着ツアーも手掛けていたが、業況改善のめどが立たず資金繰りも限界に達し、6月30日をもって新規の受注を停止。残務整理を進め今回の措置となった。
「諸般の事情で閉店廃業する」とサイト掲載
渡辺社長はOTOA役員歴任、関係者驚き
ウニベルツールは7月17日付で、「閉店のご挨拶」と題する渡辺淳二社長名の書面を同社ウェブサイトに掲載した。それによると、「弊社はブラジル・中南米専門旅行会社として昭和46年(1971年)の創業以来、49年間の長きに渡り皆様のご厚情により今日まで営業を続けてまいりましたが、諸般の事情により来たる7月19日をもって閉店廃業することとなりました」として、「突然の閉店廃業でご迷惑をおかけしますことになり、深くお詫び申し上げる次第です」とコメントしている。
閉店廃業を決断した一因とされるブラジルへのビザ免除については、本紙3月20日号で詳報の通り、ブラジル政府は日本、米国、豪州、カナダからブラジルを訪れる観光客やビジネス渡航者について、6月17日よりビザ免除とした。また、去る4月15日にはサンパウロで在留邦人が巻きこまれる強盗殺人事件が発生、その後も治安悪化が懸念される事案が相次ぐなど、経営の先行きは不透明な状況となっていた。
なお、ウニベルツールの渡辺淳二社長は、1990年代より日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)の副会長や理事、顧問などを歴任し、ツアーオペレーター業界の発展に貢献してきた功労者の一人。今回の突然の廃業に関係者は驚きを隠さなかった。
※写真=ウニベルツールのホームページに渡辺淳二社長名でアップされた閉店の挨拶