記事検索はこちらで→
2019.08.06

WING

三菱重工、省人・無人化など防衛共通のキーワード

生き残りに妥当なコストと迅速な開発で競争力を

 「防衛分野では全般的に、世界的な傾向として陸海空を問わず、モジュール化、ファミリー化、省人化・無人化、オープンアーキテクチャ化がキーワードとなっている。民生技術の進化のスピードが早く、防衛技術もこれに追従して行かざるを得ない状況がある。防衛装備を10年、20年そのまま使うことは非現実的になっており、使いながら改善して行けるものでなければならない」と三菱重工の阿部直彦防衛・宇宙セグメント長は近年の防衛産業の趨勢を話す。オープンアーキテクチャ化により、自由に複数装備を接続し、機能を拡大できるプラグ・アンド・ファイトといった考え方が一般化してきた。また、限られた防衛予算と拡大し続ける脅威対応要求から、コスト低減要求も世界的に普通のことになっている。防衛専用部品の使用は技術進歩に追随できず、民生部品の有効活用が普遍化した。このような流れの中で、阿部セグメント長に個別装備品分野での当面の流れについて聞いた。
 防衛装備品の開発には長い期間と多くの費用が必要になる。「その中で生き残っていくためには防衛関連企業はアフォーダブルでスピード感を持った開発ができるようにならねばならない。それができれば、海外から輸入しなくても、我が国の国情に合ったより使い勝手のよい装備が国内で開発され調達されるようになる」と今後の防衛産業の方向性を語る。輸入装備もすぐに実用化できるとは限らず、いろいろな過不足があるなかで運用されているのが実情かと考えられるからだ。民生品は多くの量産品から選べるので選択肢が多い。しかし、防衛装備品は世界的に見ても限られている。運用者から見てベストなものを見出すのはなかなか難しく、過不足があっても既存の装備を買うという選択をする場合もあるだろう。「機能・性能、時期、価格の面で運用者の要望に応えて行かなければ、よく言われるように日本の防衛産業はガラパゴス化し、生き残っていけなくなる。FMS調達が急増する中で痛切に感じている」と近況を述べた。

 

《2018年度中央調達実績》
 三菱重工の中央調達契約相手方首位は2018年度も変わらなかったが、契約金額は1949億円と2017年度の2457億円より大きく低減した。
 阿部セグメント長はこれについて、「巷間で言われるようなFMS(有償援助契約)の急増の影響だけでなく、まとめ買いによる年度毎の契約額の変動もある」と指摘した。
 2016年度はペトリオットシステムのまとめ買いで4532億円と急増しているし、その前年はP-1哨戒機20機のまとめ買いで川崎重工が2778億円と首位になり、三菱重工は1998億円で2位に甘んじた。このように、受注額は変動があり、しかも事前に分かっているところでもあるが、FMSの増加の影響は無視できず、国土国情に合った、必要な機能・性能を満足する装備品を、競争力のある価格で、必要な時期に提供できるようになることでしか国内防衛産業の活きる路はないということだろう。

 

戦闘機開発、政府方針出れば遅滞なく着手できる

 

次期装輪装甲車に向け提案も

 

※写真=阿部直彦防衛・宇宙セグメント長