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防衛省、F-35B正式導入決定、米軍から42機購入
23年度までに18機整備、すべての要求を満足
防衛省は8月16日、航空自衛隊への導入を検討していた短距離離陸・垂直着陸(STOVL)戦闘機の機種を米政府が提案したロッキード・マーティンF-35Bに決定した。全体で42機を導入する計画で、去年末に発表した中期防衛力整備計画(2019-2023年度)では、今後18機の整備を予定。取得に向けて2020年度から予算要求する計画だ。
防衛省はこの度の中期防で、導入を計画する45機のF-35のうち、18機をSTOVL機の機能を有する戦闘機を整備するとしていた。この機種はこれまで正式に決定していなかったが、米海兵隊も導入する最新鋭のF-35Bが最有力視されていた。機種選定は、今年4月25日に提案希望者に対して提案要求書を手交したとして、6月24日に提案者から提案書を受領した。このとき提案書として示されたのは、米国政府が提案したF-35Bのみだったとのこと。そして、約1ヵ月半の選定期間の中で、同機がSTOVL機として必要な要求事項をすべて満足しているとして、8月16日に機種決定となった。
F-35Bは、太平洋側をはじめとした航空対処能力を強化し、戦闘機運用の柔軟性を向上する目的のため、航空自衛隊が導入する。中期防では、海上自衛隊の「いずも」型多用途護衛艦へF-35Bが発着できるよう改修することが示され、海上自衛隊の2019年度予算では、「いずも」型護衛艦の改修に関する調査費用が計上された。F-35Bが護衛艦へ発着することになれば、これまでの自衛隊では類を見ない、海上自衛隊と航空自衛隊による共同ミッションとなる。
こうした運用については、海自護衛艦がいわゆる「空母化」することになるとして、広く注目されるところだ。防衛省では太平洋側が特に広大な空域を有する一方で飛行場が少ないため、同空域で有事の航空攻撃対処および警戒監視と、それらの訓練を行う必要があるとして、「いずも」型護衛艦改修の必要性を説明。あくまで有事の際の運用を想定していると強調した上で、戦闘機が発着できる機能を護衛艦へ付与することが、攻撃的な機能には当てはまらないとしてきた。
また「いずも」型護衛艦は、医療設備なども充実した多機能のヘリコプター搭載護衛艦であり、昨今急増する自然災害対処にも大きく貢献する機能を有する。F-35Bが発着できるよう改修された後にも、引き続き多機能護衛艦として、日本の防衛のみならず大規模災害対応など、多様な任務に従事することになるとして、完全に空母として運用しない考えを示した。
空自、1個飛行隊新設、F-35B部隊設立か
中国の太平洋進出脅威、広大な空域に施設不足
航空自衛隊はF-35Bを導入することで、組織の変化が予定される。防衛計画の大綱(30大綱)では、戦闘機部隊を1個増設の13個飛行隊としていて、この戦闘機部隊には、STOVL機で構成される飛行隊を含むとしている。つまり、F-35Bを運用する飛行隊が1個新設される計画となっている。
そもそも、STOVL機および護衛艦への戦闘機発着能力が必要となった背景には、中国軍による活発な太平洋進出、活動範囲の拡大がある。これまで日本にとって太平洋側は、広大な海洋に守られてきた側面がある。しかし、中国海軍は空母「遼寧」の活動範囲を広げ、さらに空母を増やすなど、太平洋側にも脅威が広がりつつある。そんな中で、太平洋側は広大な空域でありながら、それをカバーできる滑走路が不十分で、硫黄島などわずかなものとなっている。
そのため航空自衛隊では、航空警戒管制部隊を強化するなど太平洋側の警戒監視体制を強化する一方で、長大な滑走路がなくても発着が可能なSTOVL機の導入が必要となった。しかし、護衛艦へ戦闘機を搭載することになれば、単に移動する滑走路とはならず、護衛艦に対する様々な攻撃にも備える必要がある。また、海軍種と空軍種の共同ミッションは世界的にも例が少なく、運用の面で様々な課題をクリアする必要がある。
※写真=防衛省が16日に導入を決定したF-35B(提供:ロッキード・マーティン)