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2018.05.24

WING

サフランヘリ、3Dプリンターで35%までエンジン部品製造目指す

ARRANOも新インジェクションをアディティブで開発に成功

 サフラン・ヘリコプター・エンジンズでは、3Dプリンターを活用したアディティブ・マニュファクチャリングを、将来的にエンジン部品製造の35%まで拡大していく方針だ。「決して安価に製造するためということが狙いではない。アディティブ・マニュファクチャリングを用いることによって、これまでは不可能だったことができるようになってきており、我々の燃焼器についても革新的な技術が誕生している」(サフランヘリ幹部)との認識を示し、3Dプリンターを活用することで、安全性を担保しつつ、一方でこれまでチャンレンジすることができなかった技術を適用することができるようになったことに言及した。
 サフラン・ヘリコプター・エンジンズにおける3Dプリンター適用の好例は、エアバス・ヘリコプターズが開発しているH160搭載用の「ARRNO」(アラノ)エンジンだ。
 サフラン・ヘリコプター・エンジンズ幹部によれば、「(アラノエンジンは)点火スピードが非常に早い」ことが特長の一つで、燃焼器全体に着火するまでに点火から約60秒で達成することができるという。
 「このエンジンに関しては新しいインジェクターを開発した。このインジェクターは3Dプリンターで製造しており、これにより従来の技術では不可能だったことに挑戦することができた」ことを明かした。3Dプリンターで製造した部品によってガスやオイルがフレームアウトしない流れになり、素早い着火を実現することができた様相だ。

 

 エアバスヘリのH160に搭載される「ARRANO」
 様々な新設計で効率化、FADEC新技術でボアスコープ点検も不要

 

 エアバスが開発を進めているH160は2019年に運航を開始する5.5トン〜6トン級の新双発ヘリ。旅客輸送や石油・ガス事業における人員輸送、さらには緊急医療(EMS)ミッションなどもこなすことができる新型機。2015年3月に発表する以前には、「X4」と呼ばれ、その全容はベールに包まれていた。同機の特徴は史上最大となる「フェネストロン」を装備していて、この「フェネストロン」は12度傾いているとのこと。その他にも、複葉安定板「Biplane-Stabilizer」を装備した。複葉安定板の「Biplane-Stabilizer」を装備することで、低速飛行時やホバリング中の空力損失を軽減するなどの効果が期待することができるとのことで、新しい設計にチャレンジした。
 そのほかにもメイン・ローター・ブレードも特徴的で、「Blue Edge」と呼ぶこのメイン・ローター・ブレードは、従来型のメイン・ローター・ブレードと比較して、飛行時の外部騒音を半減(3dB)させるとともに、ペイロードを100キログラム増強することが可能な能力を有するという。
 この新型機を支えるのが、サフラン・ヘリコプターズ・エンジンズの「ARRANO」エンジンだ。前述したように、3Dプリンターを使って新しいインジェクターを新規に開発。その他にも補機の配置についても、日本などの顧客からの意見をフィードバックするかたちで、従来からの配置を大きく変更。さらに、ブリードバルブを無くしており、ブリードバルブの不具合が発生しないようにした。
 また各種電子部品についても、コールドセクションに配置することで、不具合の発生を抑える設計とし、火災検知についても、これまでのバイメタル製品から新しいワイヤー技術を採用することで、不具合の発生を抑えるものに変更した。加えて、FADECの新技術を採用することで、エンジンをモニタリングすることができるようになり、ボアスコープ点検も省力することができるようにしたという。
 「メンテナンス計画についても、H160に関してエアバスと協議を重ね、シンプルなものとすることができた」とのこと。基本的には機体整備間隔と合致するものことができるようにすることで、整備時間の軽減を図ったという。そのシンプルなエンジン・メンテナンス計画によれば、50飛行時間ではカウリングをあける最初のタイミングとなるとのことで、目視点検のみで特殊なツールは不要とのこと。1000飛行時間ではエンジン点検0レベルで詳細な目視点検と部分的な取り外し点検のみとすることができたとしている・
 ちなみにサフラン・ヘリコプターズ・エンジンズでは、H160型機が運航開始当初から安定した運航を実施することができるように、計25台のテストエンジンを試験に投入。仏・マリニャンヌにおける飛行試験時間は1100時間に達しているとのことで、地上運転試験を含めると、エンジンの運転試験時間は累計で5600運転時間に達しているという。

 

 顧客に寄り添った製品・サービス開発
 デジタル時代に対応したサービスも

 

 サフラン・ヘリコプター・エンジンズでは、「私達、お客様によって成長していく。お客様が求める方向に向かって進んでいく」との方針を掲げており、顧客の声に耳を傾けながら、製品開発やサービスを提供していく方針だ。ちなみに同社の研究開発費は、収入の15%を投じることにしており、「今後もこの方針を継続していく」とのことだ。
 とりわけデジタル時代に対応するということで、「エンジン・ライフ・カスタマー・ポータル」の提供をスタート。これはデジタル技術を使ったサービスの顧客のための入り口だ。例えば、修理の現況をウェブ・ポータルを使って把握することができるこのとほか、部品購入もウェブを通じて24時間対応とした。
 また、ヘルスモニタリングのサービスについても「2017年末に紹介したが、既に170者ものお客様がサービスをご利用頂いている。日本においてはどのようにしていくか、フィールドレップを中心に検討していきたい」との考えを明かした。

※写真=ARRANOエンジン(提供:サフラン・ヘリコプター・エンジンズ)