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2019.10.10

WING

第17回「国民の自衛官」10名1部隊選出・表彰へ

国民生活守る不発弾処理、人命救助など貢献

 自己犠牲の精神による人命救助や、社会との絆を強めるなど、最も活躍した自衛官を表彰する第17回「国民の自衛官」表彰式が10月8日に開かれ、10名1部隊を表彰した。この度の受賞者は、不発弾処理や、災害派遣での人命救助など、多くの人の命を救った自衛官を中心に選出。受賞者を代表してあいさつを行った陸上自衛隊第102不発弾処理隊の山根光2等陸佐は、全国の様々な場所で活躍している多くの自衛隊員、そして部隊の中から、「国民の自衛官」として選出されたことを「この上なく名誉なことであり、大変誇らしく感じている」と述べた。盛大な式典に謝意を示すとして、任務への精励を誓った。
 「国民の自衛官」表彰式は、民間で唯一の顕彰制度。フジサンケイグループ主催で、産経新聞社が主管となって、防衛省が協力、防衛装備工業会、防衛懇話会、タカラベルモント、ユニオンが協賛。航空新聞社も特別協賛している。同表彰は、日本の国土と安全を守るために日夜努力する自衛官の活動を多くの国民に伝え、理解を深めるため、2002(平成14)年に創設。これまでに159名16部隊、合計175組を表彰した。今年度の選考では、陸・海・空の様々な専門分野で功績のあった自衛官が推薦されるかたちとなった。また、表彰後には、航空自衛隊航空中央音楽隊(指揮:渡邊与秀1等空尉)による祝賀演奏会が行われた。

 

彬子女王殿下「自衛隊の姿に心打たれる」

 

 表彰式では、故三笠宮寛仁親王の長女である彬子女王殿下が毎回臨席され、お言葉を述べられている。この度、国民の自衛官表彰式が「日本国の国土防衛に取り組むと同時に、災害時の緊急救助活動で活躍されたり、日々の生活の中で社会との絆を深めたりと、その名の通り日本国民の誇りである自衛官を表彰する制度」であり、今年も「大雨、台風、山林火災など、自衛隊の活躍を目にすることの多い年だった」と説明された。
 また以前に、東日本大震災の被災者から聞かれたエピソードを披露。その被災者は、怪我をしてヘリコプターで病院へ運ばれる途中、住み慣れた故郷の変わり果てた姿を見て“二度と帰ってくるか”と思ったものの、1ヵ月半ほどで帰りたいと思い、仮設住宅に1人で住んでいると説明。「それが今も強く心に残っている」とのことで、続けて「一度は背を向けても必ず立返ってしまう場所、どうしても忘れられない場所が故郷というもの」だと述べられた。そのため、故郷を守り、支えるため「日夜尽力してくださっている自衛隊の姿に心打たれる」として自衛官の活躍を労われた。

 

山本副大臣「国民の信頼に応える努力必要」

 

 防衛省を代表してあいさつを行った山本ともひろ副大臣は、自衛隊が国家の究極の危機管理を担う実力組織であるとした上で「何よりも国民の信頼に支えられなければ、任務を十分に果たすことはできない」と説明した。そのため自衛隊員は「日々職務に精励し、国民の信頼と期待に応えるために努力していくことが必要」だと述べた。
 ここで、このほど受賞した第102不発弾処理隊を例に、創隊以来「148回にわたる大型爆弾などの安全化などを含む、約364万発、約495トンの不発弾を処理」して、国民の安定した日常生活の確保に寄与したことを説明。そのほかの受賞者についても「各専門分野での地道な努力や、社会での絆を強める活動、危険を顧みない責任ある行動が評価され、全国約25万人の自衛隊員の中から、国民の自衛官として選ばれた」と話した。
 その上で、今回の受賞は日々の努力の賜であると同時に「所属する部隊の上司の指導、同僚の支援、特に家族の理解と支えがあってこその受賞」であり、周囲の協力あってこその評価であることを強調。受賞した自衛官に対して、「全国の隊員の模範となるべく、一層努力することを期待する」と激励した。
 受賞した部隊、隊員と評価内容は次のとおり。
《陸上自衛隊》
▼東部方面後方支援隊第102不発弾処理隊
 創隊以来、約364万発、約495トンの不発弾を安全化。平成30年度には、硫黄島で約1万2000発の不発弾を処理し、任務を果たした
▼東北方面ヘリコプター隊 馬場正幸3等陸佐
 東日本大震災復興班長として、災害派遣活動に従事。夜間を含め16時間におよぶヘリによる救助活動により、約45名を救助した。また被曝の危険を顧みず、原発周辺の航空偵察を行った。
▼札幌病院准看護学院 蓑手博恵(みのてひろえ)3等陸佐
 去年12月に札幌市で発生した爆発事故で、爆発に巻き込まれ、自ら負傷しながらも救護活動に当たり、負傷者を救った。
▼九州補給処富野弾薬支処 梅木崇(うめきたかし)准陸尉
 約20年にわたり、不発弾処理に従事するスペシャリスト。261回の緊急出動を含む、全国トップクラスの903回もの出動を行った。2016年には、硫黄島遺骨収集帰還事業にも携わった。
▼元第8師団第8飛行隊 勝本潤二元2等陸佐
 無事故飛行6000時間以上に到達した操縦士。1993年の北海道南西沖地震を始め、多くの災害派遣に従事した。教官としても56人の後継者を育成した。
《海上自衛隊》
▼舞鶴水中処分隊 小梶真和(こかじまさかず)1等海曹
 2018年4月舞鶴市で海に転落した70代の男性を発見。海へ飛び込んで救命措置を行った。西日本豪雨災害でも潜水で捜索に当たり、遺体を発見した。
▼岩国航空基地隊 田村幸子(たむらさちこ)防衛技官
 海上自衛隊入隊以来、岩国航空基地で35年にわたり、隊員への栄養指導を行う。そのかたわら、ご当地メニューを導入するなど、延べ1000万食の献立を管理栄養士として作成。食育を実践した。
▼元硫黄島航空分遣隊 石井純一元3等海佐
 入隊以来、ヘリ操縦士として日本の海上交通の安全を担った。7年間在籍した救難隊では、離島からの急患輸送など32件、海難救助など4件、合計56人の人命救助に従事し、教官として延べ294人の育成に携わった。
《航空自衛隊》
▼特別航空輸送隊整備隊 辻井正(つじいただし)准空尉
 航空機整備のスペシャリストとして、要人空輸に2010年から従事し、外交の一翼を担った。今年4月の新政府専用機初の任務運航の整備も的確に実施した。
▼航空総隊司令部防衛部運用課 緒嶋禎肇(おじまよしとし)1等空曹
 東日本大震災で石巻市の中学校へ多数の被災者が避難していた中、困難な状況ながら校舎内にいた100人以上を救助した。各地で災害派遣に関する航援などを積極的に行う。入間市の中学校では駅伝部監督を13年間務める。
▼第3航空団基地業務群管理隊 小瀬川晃1等空曹
 去年の西日本豪雨災害時に三沢基地警備犬チームの一員として、パートナーのサン号とともに被災者救助に当たり、行方不明者1名を発見した。また2度にわたりイラク人道復興支援派遣輸送航空隊警備分隊長として貢献した。

 

※写真1=第17回「国民の自衛官」に選出された、10名1部隊の隊員

※写真2=彬子女王殿下は故郷を守る自衛官の姿に心打たれる、と述べられた

※写真3=国民の信頼なくして任務を果たすことはできない、と話す山本ともひろ副大臣

※写真4=表彰式では自衛官を支える家族も表彰される

※写真5=受賞者を代表して陸上自衛隊第102不発弾処理隊の山根光2等陸佐があいさつを述べた