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2019.10.28

WING

離島など地域航空の維持で九州地域3社と大手2社が連携

JAL・ANA垣根を超え提携、21年度にもコードシェア実現か
 
 離島などの生活路線を維持することを目指す地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合(EAS LLP)が10月25日に発足した。このEAS LLPには、天草エアライン、オリエンタルエアブリッジ、日本エアコミューターといった九州の地域航空3社に加えて、日本航空(JAL)、全日空(ANA)ら大手エアラインも参画。大手の垣根を超えたコードシェアの展開のほか、整備、予備機・部品の共用、乗員の確保などのほか、旅行商品の共同開発や販売の合同プロモーションの展開といった様々な観点から協業の促進・拡大を模索する。活動期間は2023年10月24日までの4年間を計画しており、3年が経過した後に1年間かけてそれまでの取り組みを検証する。
 EAS LLPの事務局長に就任したJALの畑山博康事務局長は25日の会見で、JALとANAという大手の垣根を超えて協業することを目指すことについて、「象徴的なものはコードシェア。実現すれば、これはANAが出資している航空会社にJALがコードシェアをすることは初めてのこと。JALもANAも1950年代から60年以上に亘って民間航空事業を展開しているが、その歴史のなかでも初めてのこと」と話した。このコードシェアについては、2021年度中に実現することを目指す。
 離島路線やそれに準じるような地方路線はもともと需要が細く、そうした路線の運航を担う地域航空の経営は苦しい。今後さらに少子高齢化と人口減少が加速していくに連れて、これまで離島住民などの生活路線の運航を担ってきた地域航空の経営は、ますます苦境に立たされるだろうことは想像に難くない。
 そうしたなか国は研究会を設置して持続可能な地域航空のあり方の検討に立ち上があり、2018年3月末に同研究会の最終報告書がまとめた。この報告書では長期的な視点で地域航空を担う組織のあり方自体を抜本的に変えることを検討すべきことが提言。機材共同保有組織、持株会社の設立による経営統合、さらには一社化(合併)にまで踏み込んだかたちでの組織形態について検証し、一社化(合併)または持株会社の設立による経営統合の形態を模索していくべきとしていた。
 今回は経営統合や持株会社化などといった形態には至らず、2005年に成立した日本版LLP(有限責任事業組合)法により定義された法人形態で協業することになった。
 畑山事務局長は一社化(合併)ではなく、LLP形態を選択した理由について、「経営統合となれば、数々のハードルがある。各社の事情や自治体の意向などもあって、そうした利害調整にはかなりの時間を要してしまう」ことに言及。「経営統合には、様々なものを統一しなければならず、そうしたことにも時間も要する。地域航空の置かれた厳しい環境を考慮すると、そうしたことに時間をかけて議論するということよりも、待ったなしに実効性のある施策を進めなければならない」とし、そうしたなかで生まれたアイデアがLLPだったと説明した。

 

LLPの事務所は都内に、技術面は鹿児島がベース

 

商品開発など一部で競合スタート
機材導入の協力体制は来年度中にも

 

※写真=九州地区の地域航空3社と大手が地域航空の維持で協業。JALとANAのコードシェアも実現する

※写真=10月25日に開かれた第1回の会議の様子

※写真=少子高齢化、人口減少など地域航空が抱える課題は大きい。関係者間で持続可能な地域航空の実現に向けて動き出した