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2019.11.11

WING

日本の研究チーム、太陽放射線被ばく警報システム開発

航空機乗員の宇宙放射線被ばく線量をリアルタイム監視可能に

 情報通信研究機構(NICT)、日本原子力研究開発機構、そして国立極地研究所を中心とする研究グループが、太陽フレア発生直後から太陽放射線による被ばく線量を推定することができる太陽放射線被ばく警報システム「WASAVIES(ワサビーズ)」の開発に成功した。
 これにより例えば、航空機の乗員などの被ばく線量をリアルタイムに監視することによって、必要に応じて航路を変更するなど、航空機の運航管理に利用される宇宙天気情報の一つとして、宇宙放射線被ばくに関する情報提供ができるようになる。
 なお、NICTは国際民間航空機関(ICAO)のグローバル宇宙天気センターの一員として通信・衛星測位・放射線被ばくに関する情報を提供していくこととなった。NICTによれば、ICAOのグローバル宇宙天気センターの一員となったのは、アジアで唯一とのこと。通信・衛星測位・放射線被ばくに関する情報を提供していく計画で、「「WASAVIES」の技術が、そうした情報提供に活かされることになる。
 今後研究チームでは「WASAVIES」を被ばく線量のリアルタイム推定だけでなく、現在試行的に行っている予測についても実用に耐え得る精度に向上することを目指す。さらにシステムを宇宙空間まで拡張することで、有人月・惑星探査などにおける宇宙飛行士の被ばく管理や、大規模太陽フレア発生時の宇宙飛行士の退避判断などにも利用できるシステムとすることを目指していく考え。
 なお、「WASAVIES」の開発に際しては、NICTが太陽放射線到来シミュレーションの開発、情報公開のためのホームページの開発と運用を、日本原子力研究開発機構は大気中での核反応シミュレーションの開発、全シミュレーションの統合システムの開発、極地研究所が磁気圏内での伝搬シミュレーションの開発を担当。さらに広島大学がリアルタイムイベント検出アルゴリズムの開発、茨城工業高等専門学校が磁気圏内での伝搬シミュレーションの改良、そして名古屋大学が過去データを利用したシステム性能の評価を、それぞれ担当した。

宇宙放射線被ばく避けた運航も可能に?
WASAVIES、高度100kmまでリアルタイム観測