WING
JAXAエンジニアが描く宇宙工場、小型衛星で材料生産
原子内包フラーレンなど高付加価値材料を無重力環境で
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の衛星開発プロジェクトなどに従事したエンジニアメンバーたちが、小型衛星を使った宇宙工場で、原子内包フラーレンの製造を検討中だ。「Work Dock Inc」というチームを結成して、宇宙におけるモノの製造という新たな産業を実現することを目指している。
原子内包フラーレンは量子コンピュータなどの素材として知られているが、課題はその製造コスト。1グラムあたり190億円とも言われる超高額な製造コストがネックとなっている。「Work Dock Inc」の古賀勝氏によれば、「なぜこれほど高額になっているのかといえば、製造することが難しいため」との認識を示しつつ、「ある研究によれば、無重力環境でこの物質を製造したならば、収量が10倍から数十倍に跳ね上がることが報告されている」と、飛躍的に製造コストを抑えることができることを明かした。
宇宙で材料を生産する時代は、恐らくそう遠くない時には実現するだろう。宇宙で必要なモノを3Dプリンターで製造する実証などが進められているほか、例えば、将来の月面基地建設などでは月面を覆うレゴリスなどを建材とすることも想定されている。
そうしたなか、無重力空間という宇宙空間最大の特徴を活かしたモノづくりも行われようとしているのだ。
「Work Dock Inc」では、”スペース・スパイス・ファクトリー”というコンセプトで、小型衛星を使った宇宙工場の実現を目指している。「かつて大航海時代に海を超えて船乗りたちを引き寄せた香辛料。それと同じようなものを宇宙においても創りたい。宇宙の香辛料・スペーススパイス。これをこの事業を通じて増やしていきたい」と夢を語る。
古賀氏は「製造する上で、重力が邪魔になるということがある」との見方を示しており、「我々の提供する価値は無重力」であることを強調。「例えば、ある種のタンパク質結晶、高性能な光ファイバー材料、人工的に臓器を作るバイオプリンティング技術、特殊な物質。無重力でしか作れないものが世の中に多く存在する」と話した。
なかでも注目しているのが前述した原子内包フラーレンだ。製造が難しい原子内包フラーレンだが、「無重力だと非常に作りやすくなる」とコメント。その製造装置は「30センチ四方程度の非常にコンパクトなサイズだ。そのため小型の人工衛星にもすっぽりと収まるサイズ」との認識を示した。その上で、「人工衛星に製造装置を搭載してロケットで宇宙へと運び、軌道上の無重力環境でそのものを製造する。製造したところで小型衛星を地球に再突入させて、製造したものを販売する。一連の流れをサービスとして提供することが出来ると考えている」ことを明かした。
また、小型衛星を活用する理由について、・・・