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2020.02.21

WING

IATA、新型コロナでアジア太平洋は278億ドル損失

通年の旅客需要、当初予測比13%減少も

 国際航空運送協会(IATA)は2月20日(米国ニューヨーク現地時間)、新型コロナウイルス「COVID-19」の感染拡大による航空業界への影響について、アジア太平洋地域の航空会社は278億米ドル(約3兆1136億ドル※1ドル112円換算)もの損失を被る可能性があることを発表した。その大部分は中国市場の航空会社が負担することになり、中国市場の損失は128億米ドル(1兆4336億米ドル)にのぼると試算した。
 IATAはアジア太平洋の航空会社の通年旅客需要(RPK)について、昨年12月に発表した2020年の予測と比較して13%減少する可能性があることを示唆。昨年12月の予測でIATAはアジア太平洋地域のRPK伸び率は4.8%拡大すると予測していた。ちなみに2019年実績のRPK伸び率と比べても、今年のRPKは8.2%も落ち込む見通しにあるとしている。

 

世界全体では293億ドルの損失に
世界のRPK、+4.1%予想から一転マイナスに

 

 またIATAはアジア太平洋地域外の航空会社は、需要の損失が中国に関連する市場に限定されると仮定して、約15億ドル(約1680億ドル)の収益上の損失を被ると予測。これにより世界全体の収益の損失は計293億ドル(約3兆2816億ドル)と試算しており、昨年12月にIATAが示した予測と比較して、旅客収益が5%減少するとの見方を示した。
 旅客需要ベースではIATAは昨年12月に世界全体のRPK伸び率は4.1%と予測していたが、一転して2020年の旅客需要は-0.6%のマイナス成長になるだろうとの見通しを示しており、当初予測に比べて4.7ポイント悪化するとしている。

 

ジュニアックCEO、世界全体需要低下の可能性
金融危機以来初めて直面する危機に

 

 そうしたなかIATAのアレクサンドル・ドゥ・ジュニアックCEOは、新型コロナウイルスの感染拡大について、「世界の航空輸送業界にとってチャレンジングな時だ」と航空業界は危機に直面していることに警鐘を鳴らす。その上で、「ウイルスの拡散を防止することが最優先事項」であることを強調しつつ、「航空会社は世界保健機関(WHO)およびその他の公衆衛生当局の指示に従って、旅客の安全にを保ちつつ、世界を繋ぎながらも、ウイルスを封じ込める努力をしている」との認識を示した。
 「COVID-19感染拡大の結果としての需要の急激な低下は、航空会社に財政的な影響を与えている。とくに中国市場の航空会社にとっては深刻だ」とし、「ウイルスによって世界のトラフィックが4.7%減少すると予測され、我々が以前に予測した成長を相殺するだろう。2008年から2009年にかけて起きた世界金融危機以来、航空業界が経験する最初の全体的な需要の低下を引き起こす可能性がある」との見方を示した。

 

SARSに見られた半年後のV字回復に期待も
同様のプロファイル辿るか定かではない

 

政府の役割とリーダーシップが重要
航空会社に対する支援措置必要性も

 

WHOは渡航・貿易制限を求めていない
IATA、航空輸送の安全性を強調

 

※写真=COVID-19で減退する需要。航空業界は危機に直面しており、IATAは今年のアジア太平洋地域の収益損失を約3兆円と予測した(提供:IATA)

※グラフ=SARSの時と同様にV時回復のシナリオを描くが?(出典:IATA資料より)