記事検索はこちらで→
2018.12.24

定番パッケージツアーの終焉

 2018年が終わろうとしている。年頭で日本旅行業協会(JATA)の田川博己会長は、18年を「備える年」と位置づけた。確かに、2019年のラグビーワールドカップ日本大会から大きなイベントが目白押しで、それに備える意味でも的確な表現だった。
 だが、この1年を振り返ると、今年は「災害の年」だった。旅行業界の書き入れ時である夏場から秋にかけて、関西を中心に西日本に台風、北海道で地震が発生し、多くの方が被災に遭われ、旅行業界も経営的に大きな影響を受けた。自然災害やテロ、感染症などのリスクは、今や想定外ではなく、起こり得ることとしてリスクヘッジしなければならないことを改めて実感した1年だった。
 今年は業界最大手のJTBが分社から再統合し、「第三の創業」として新たなスタートを切った。同時に、「ルックJTB」に代表されるパッケージツアーからダイナミック・パッケージの「ダイナミックJTB」へ主力商品を転換する節目の年となった。
 既に、航空会社は楽天と組んだり、自社系列で、ダイナミック・パッケージが主力商品として販売しているが、旅行業界もJTBのダイナミック・パッケージ参入で、パッケージツアーからダイナミック・パッケージへの流れは決定的となった。
 大手旅行会社として、国内旅行はもとより海外旅行で事業規模を維持するならば、パッケージツアーからダイナミック・パッケージへの移行は必然と思う。大手を持ってしても、グローバルなOTAには資金力で圧倒的な差があり、同じ土俵で戦っても勝負は見えている。
 OTAができない部分で勝負する。そこに勝機が見えてくる。まずはダイナミック・パッケージにより価格面で対抗する。航空機+宿泊施設で拮抗すれば、あとはランドの勝負となる。
 旅行会社にできて、OTAにできないことはランドの充実にある。JTBは、ダイナミックJTBの導入とともに、欧州で周遊バスを走らせるシートインコーチ事業「ランドクルーズ」を2019年から展開する。
 例えば、欧米ならニューヨーク、ロンドン、パリ、アジアならソウル、上海、北京、香港、マカオ、バンコク、シンガポールなどなど、都市に行くならOTAやダイナミック・パッケージで事足りる。現地アクセスもほとんど問題はない。
 しかし、広域を旅したいときにはどうするか。「タビマエ」に考えるだけで行くことに萎えてくる。欧州ならパリやフランクフルトに着いてから、特定の場所を効率よく、じっくりと周りたい。だが、個人ではそれが難しい。パッケージでは効率的に周れるが、じっくり見たい所は妥協せざるを得ない。これらに対する回答が「ランドクルーズ」ではないか。
 これからの海外旅行有力市場である「ポスト団塊世代」は、欧州への思い入れが強く、新婚旅行で欧州へいった人々も多い。子供も手離れして、もう一度、欧州を巡ってみたいと思う人は多いだろう。そのマーケットには、自由度の高い「ダイナミック・パッケージ+現地発着周遊バス」は一つの答えだと思う。これに鉄道を加えるのもいいかもしれない。
 まずは欧州からだが、この流れは米国本土、中国、アジアなど広域を旅するところへと広がっていくだろう。
 一方で、高品質のパッケージツアーは、いつの世もニーズはある。秘境・冒険・芸術・歴史など、特別な体験を求める旅はこれからも進化していく。
 だが、大量生産のパッケージツアーは終焉の時を迎えた。JTBの「旅革命」を大手各社をどうみるか。2019年にその答えが出るだろう。(石原)