業界挙げてハワイ需要拡大
全日空と日本航空の2019年度の路線便数計画が出揃った。両社ともに、国際線の事業規模拡大に主眼を置き、国内線に関しては需要に応じた便数調整、機材変更などにとどめている。既に、国内線は空港整備がほぼ行きわたり、新空港の開港、かつてのジェット化などの容量拡大が望めないことから、航空会社の事業拡大は今後も国際線に集中してくる。
国際線事業は日本発アウトバウンド一辺倒の時代から国策の訪日インバウンドの成長を受けて、近年は国際線の新規就航、再開が目立つようになってきた。アウトバウンド一辺倒の時代から、アウトとインが50-50か、60-40ぐらいの割合を理想として供給が増えつつある。
ただ、訪日の急成長に伴い、今度はインバウンド偏重に振れており、ここはもう少し振り子を戻して、アウトバウンド需要に対応することを旅行業界としては期待している。
だが、国際線にはリゾート路線などアウトバウンド需要が中心の路線もある。そうした路線は訪日旅行は増えても、海外旅行需要の低迷で減便、運休など厳しい状況に置かれていたが、近年のアウトバウンド需要の復活で、再開の動きが出てきた。
日本人の海外旅行者数が2018年は過去最高の1895万人まで伸び、上向きになっていることが大きな要因だが、今回のANAとJALの計画では、日本最大のアウトバウンド方面ともいうべき、ハワイに焦点が当てられている。
最盛期には年間200万人を数えた日本人のハワイ渡航者数が復活することを期待してやまない。ハワイ州観光局の新たなハワイキャンペーンは「発見 ハワイ」。今年は日本人旅行者160万人を目標とする。この目標を達成するには、航空会社、旅行会社の協力が不可欠となる。
ANAが5月下旬から成田−ホノルル線にA380型機を導入することで、ハワイに注目が集まっている。7月からはA380型機で週10往復することから、この供給に対して需要を埋めることはなかなかのチャレンジだと思う。
JALはこれに対抗して、ハワイに新たなサービスを導入する。ANAのA380を意識してか、夏休み、ゴールデンウィークには、成田−ホノルル線にファーストクラスを設定する。
ハワイは富裕層、ロマンスマーケットから、カップル、家族、若年層、さらにはグループ、教育旅行と多様なマーケットが個々に増えることで、全体の需要が拡大する。
JTBの2019年度デスティネーションキャンペーンは「ハワイ」。1月25日から「JTBついてる!Hawaiiキャンペーン」をスタートした。JTBは2019年度に、日系航空会社による地方発のホノルルチャーター便を利用した旅行商品を拡充していく予定だ。だが、これは前段であり、JTBの今後のハワイへの取り組みが注目される。
リゾート路線はそれぞれに競合が多い。ハワイは、デスティネーションなら近隣のグアム・サイパン、アジア、南太平洋、さらには国内沖縄・先島と競合する。航空会社はJAL、ANAの国内キャリアはもより、米系キャリア、さらにはLCCと競争は厳しい。旅行会社はデスティネーション・キャンペーンを決めたJTBとHIS、さらには海外・国内OTA、他の旅行会社の競争は厳しさを増すだろう。
供給が増えるからと言って、価格ではアジアのデスティネーションに勝てない。そこは競争と協調で乗り切り、将来の200万人復活へ業界全体で相乗効果を生み出してほしい。
航空会社も旅行会社もキャンペーンを上手く利用して、自社の収益を拡大すれば良いことだ。お互いに足の引っ張り合いをすれば疲弊するだけだ。現地へ行くと、競争と協調がよく分かる。今年は「オールジャパン」でハワイを盛り上げたい。(石原)