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2019.04.15

HIS、JATA正会員やめる

 エイチ・アイ・エス(HIS)が4月1日付で、日本旅行業協会(JATA)の正会員をやめて協力会員に移行した。既に、澤田秀雄会長兼社長はJATAの理事を辞していた。JATAでは正会員にとどまるように説得したもようだが、HISは協力会員としてJATAには残るものの、正会員をやめることを決めた。
 HISは正会員から協力会員に移行した理由について、JATAは日本からの海外旅行事業中心の一般社団法人であり、HISは日本発にとどまらず、グローバルに旅行事業を展開しており、今後さらにグローバル化が加速することから、正会員から協力会員に移行することにしたとしている。
 日本の大手企業は国内需要の先細りもあり、ずいぶん前からグローバル化しており、グローバル化したからといって有力企業が業界団体の正会員から離れるという話はあまり聞かない。
 但し、この先HISが本社を日本から外国に移転し、日本の旅行業法にとらわれず、外国企業としての道を歩むならまた別の話になる。また、HISは旅行業だけでなく、多角的に事業を展開しており、一業界団体にとどまってはいられないと判断したかもしれない。
 伝統的な業界団体は、発足時の有力企業の出向者で重要ポストが占められる。また、専務理事、常務理事は官僚経験者が多い。JATAもその傾向にあるのは事実だが、だからこそ、政・官・民が協力して旅行業がここまで発展してきた。
 一方で、ベンチャーとして旅行業を起こし、今や海外旅行取扱高2位、総旅行取扱高4位まで成長したHISは、既存の旅行会社とは明らかに企業体質が違う。
 HISの事業規模からすれば、JATAの中で一定の存在感を示しても良いはずだが、JATAがHISから距離を置いているのか、HISがJATAから距離を置いているのかは分からないが、今の距離感なら正会員よりも協力会員が妥当と判断したのかもしれない。
 JATAによると、HISが正会員になることで、年会費は約350万円減額になるという。JATAでは2019年度収支計画にこの減額を織り込み済みとしている。一方で、HISは協力会員としての年額7万円の会費で済む。多分、金額の話ではないだろう。
 ただ、海外旅行事業をJTBと二分するHISがJATAの正会員から協力会員に移行したことが、業界の内外に少なからず影響を与えるだろう。
 まず、JATA会員だが、HISが正会員から協力会員になり、JATAとの関係が問題なければ、我々も正会員から協力会員に移行するという声が出てこないだろうか。また、中小の旅行会社の中には、正会員の会費はかなりの負担になっている企業もあると聞く。正会員と協力会員の差は少なからずあれど、継続できるのであれば、この際、協力会員に移行する会社が出てくるかもしれない。
 また、旅行会社のパートナーはやはり戸惑いを隠せないだろう。日本からの旅行者を誘致したい各国・各地域の観光局は、業界団体と一緒に活動するからこそメリットがある。JATAアウトバウンド協議会(JOTC)の役員に澤田会長兼社長は残るというが、この先の懸念は残るだろう。
 今回のHISのJATA正会員から協力会員への移行について、JATAもHISもアクションを起こしていない。JATA役員会で説明がなされ、JATAは観光庁にも報告したというが、公表しなかった。HISも一切発表しなかった。日本を代表する旅行会社が業界団体の正会員から協力会員になることは不自然である。正会員と協力会員の違いは何なのか。もう少し丁寧に説明すべきではないか。(石原)