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2018.06.29

WING

ANA株総、A380全3機の導入予定時期公表

平子社長、ハワイ・リゾート戦略をアピール

 ANAホールディングスの定時株主総会が6月28日、都内で開催された。このなかでANAの平子裕志社長がA380を使ったハワイリゾート戦略について説明。このなかで”FLYING HONU”(空飛ぶウミガメ)と名付けたA380の導入時期に言及。会場に投影したスライドのなかで、その初号機であるハワイの空の表現した”ANAブルー”の1号機目は計画通り来年第1四半期に導入することのほか、2機目となるハワイの海を表現した”エメラルドグリーン”も2019年度第1四半期に導入することを明かした。さらに、3機目のハワイの「夕陽」をイメージした”サンセットオレンジ”については、2020年度第1四半期に導入することを明かした。
 なお今回の株主総会への出席者数は1712名と、昨年度の2111名と比較すると、やや少ない出席者数となったが、1号議案の「余剰金処分の件」、2号議案「取締役10名選任」、そして3号議案「監査役1名選任の件」といった全ての議案が承認された。

 

 A380を3機投入で1日1560席提供可能に
 「特典航空券で利用可能に」、株主限定ツアーも計画

 

 平子社長は日本ーハワイ間のマーケット規模について、「昨年度は150万人規模。1日あたり約4000名が渡航している」ことに言及。「リーマン・ショックなどの影響を受けることなく、需要は安定的に推移している」との認識を示した。さらに、「昨年度は10年前と比べて30%以上増加した。日本人にとって根強いリゾート地」と、堅調に成長を続けているマーケットであることを強調した。
 現在、ANAは東京ーハワイ間に246席仕様の787-9型機を1日3便投入中だ。つまり1日当たり片道738席を提供している計算。ただ、「搭乗率は90%を超えていて座整数が足りない状況が続いている」(平子社長)とのことで、従前から株主の間から特典航空券を使ってハワイ線を利用することができないなどといった不満が出ていた。
 この東京ーハワイ線にANAは、ファーストクラス8席、ビジネスクラス56席、プレミアムエコノミー73席、エコノミークラス383席を装備した総座席数520席仕様の機体を投入する。3機体制となる2020年度以降、1日当たり片道1560席を投入することができるようになり、提供座席数の供給量は「現在に比べて二倍以上になる」。これにより、「特典航空券での利用がより容易になると考えている」(平子社長)とみており、株主が抱く不満の解消にも繋がるだろうと期待を寄せた。
 さらに平子社長は機内設備や各クラスのシートについて説明。ハワイ線に初めて導入するファーストクラスや新たな試みとなるカウチシート、さらには授乳など様々な用途に使うことができる多目的ルームを株主に紹介した。
 平子社長は「今年の秋には就航開始日や運航ダイヤ、発売時期などを発表する」としたほか、「A380のホノルル線就航を記念して、株主限定ツアーを提供する予定」にあることも明かした。詳細は現段階では未定とのことで、決定次第、株主に案内する。
 また、A380の整備体制については、「3機ということで効率的な体制をつくるべく現在検討している」(満倉達彦取締役)とコメント。「ライン整備以外については外部委託することを検討しており、A380を運航しているシンガポール航空、アシアナ航空、ルフトハンザなどが有力な委託先になろうかと思う」とし、「ほかにも高品質サービスを提供する整備会社があるため、全体を公平に評価して選定を進めていく」方針を示した。

 

 パイロットリソース、「安定的に乗員確保できている」
 今後はADO・ソラシドらパートナーと共同養成も検討

 

 また、事前質問として挙がっていたパイロット不足問題についてANAホールディングスの長峯豊之副社長が回答。「現状、中心的な世代となる30-40-50代の人数構成は、それぞれ30%台。安定的に乗員を確保することができている」と説明した。
 その出身母体としては「自社養成が約50%、航空大学校出身で40%を構成している。残りの10%は自衛隊出身および私立大学の養成コースで占めている」という。2017年度の採用者数は約60名だったが、その出身母体の割合も「全体構成とだいたい同じ」割合となっていることを明かした。一方、退職者数は「定年退職などで約50名となっている」という。
 ANAグループでは事業運営に不可欠なパイロットリソース確保について、「採用、養成訓練、効果効率化という3つの観点で継続的に取り組みを進めている」とのこと。
 「航空大学校の年間定員数は従来の72名から1.5倍の108名に増員しており、航空大学校、私立大学の養成コースなど、パイロットを希望する学生に対する奨学金制度の拡充も図った」とし、「防衛省の割愛制度の活用についても、促進・推進をしている」と説明。「60歳以上のシニアパイロットや外国人の派遣パイロットの円滑な活用、さらにグループ独自の施策として、自社養成スキームではこれまでのANAに加えてピーチ・アビエーションでも開始した」とし、さらには「ANAと提携しているAIRDO、ソラシドエアといったパートナーエアラインとの共同養成について、現在、検討している」ことを明かした。
 その上で、「航空大学校や私立大学校の養成コースを卒業した有資格者の採用については、基礎訓練過程を終了しているので、訓練費用の削減につながる。今後も一定規模の人数を安定的、継続的に採用することを計画している」ことに言及した。
 また、MPL訓練やパイロットの資格の維持管理に関わるAQP(アドバンスド・クオリフィケーション・プログラム)を導入済みであることに触れ、「以前に比べて、訓練費用の大きな低減に繋がっている。2800名規模のパイロットが在籍するが、こうした取り組みを継続・発展させることで、国際線事業規模拡大の契機となる2020年の首都圏発着枠拡大への対応を含めて、中期戦略期間中のパイロットリソースをしっかりと確保していく」と話した。その上で、「一般的に2030年のパイロット不足問題といわれているが、当社グループでは様々な施策を安定継続的にすることで、現行パイロット・リソース以上の生産対応力を確保していくことができる」と、生産力確保に自信をのぞかせた。