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航空輸送への利用者不安拡大、4月調査より利用意向後退
IATA、「旅行嗜好失われておらずも危機以前への回復に障害」
国際航空運送協会(IATA)が7月7日(ジュネーブ現地時間)に発表した最新の世論調査によれば、未だ感染拡大が収まらない新型コロナウイルスの影響で、利用者が航空輸送の利用に対して懸念を大きくしている様相が浮き彫りとなった。
IATAによる調査の結果、アンケート調査を受けた45%の人々が、パンデミック収束以降、数ヵ月以内に航空輸送を利用した渡航・旅行を再開すると回答した。しかしながら4月に実施した調査では、61%の人々がパンデミック収束から数ヵ月以内に渡航・旅行を再開すると回答していたことを鑑みると、数ヵ月以内の航空利用意向は大きく後退しているかたちだ。
IATAは「調査結果は総合的にみて、人々の旅行などへの嗜好は失われていないことを示している」としながらも、「新型コロナ危機以前のレベルの旅行に戻るには障害となるものがあることを示している」との見解を明らかにした。
また、パンデミック収束後、できるだけ早く家族や友人に会うための旅行すると回答した人が57%にのぼったほか、56%の人々が休暇で利用すると回答。55%の人々がビジネス渡航として利用するとも回答した。
大多数の人々が航空利用を再開すると回答した一方で、66%の人々がパンデミック収束後、レジャーやビジネスのための航空利用は少なくなるだろうとも回答した。さらに、64%の人々が経済的要因が改善するまで航空機の利用や旅行を延期するとの見通しも示したという。
この調査結果を受けてIATAのアレクサンドル・ドゥ・ジュニアックCEOは、「人々が渡航・旅行中に新型コロナウイルスの感染を懸念していることは明らかだ」とコメント。「ただ、国際民間航空機関(ICAO)タスクフォースが策定した”Takeoff”ガイダンスの下、政府や業界が導入している対策にも安心感を覚えているようだ。これは航空輸送に対する信頼を回復するために、我々が正しい道を歩んでいることを物語るもの」との認識を示し、業界が講じている数々の対策に手応えを感じていることを明かした。
その一方で、「回復には時間を要するだろう。最大限の効果を得るためには、各国政府がこれらの対策を世界的に展開することが重要」だとし、世界各国政府が一丸となって対策を推進することの重要性を訴えた。
ジュニアックCEOは「このコロナ危機は、航空業界に非常に長い影を落とす可能性がある」ことに触れ、「旅客がコロナ危機以前の渡航・旅行習慣に戻るまでには時間がかかると回答しており、多くの航空会社は2023年か2024年まで航空需要が2019年のレベルに戻ることを計画していない」とコメントした。
「各国政府がコロナ危機のピーク時に業界に対する財政的支援、その他の救済措置で対応してきた。世界の一部の地域では回復への長い道のりがスタートしたばかりで、政府が関与し続けることが重要だ」と業界に対する継続的な政府支援が鍵を握ることに言及。「U/Lルールの緩和、減税、コスト削減策などの救済措置を継続することは、今後しばらくの間、重要な意味を持つだろう」と話した。
検疫実施は「航空需要キラー」
85%の人々が隔離を懸念
利用者自ら講じる多重の感染症対策が浸透
利用者が空港や機内で感じる不安とは?
客室内空気への不安、依然として57%
社会的距離確保が困難な点にも懸念
※写真=感染拡大が一向に収まらない新型コロナウイルス。それに連れていわゆる3密空間でもある航空輸送に対する利用者の不安も拡大している様相だ