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2017.05.29

新時代の日韓観光交流へ

 来年2月9日から平昌冬季オリンピック・パラリンピックが開催される。既に開催まで300日を切り、日本からの多くの来場者が訪韓することが期待されている。去る5月18日には、韓国観光公社(KTO)と江原道主催による「韓国観光の夕べ」が開催され、鄭KTO社長、崔江原道知事、朴韓国訪問委員会委員長、呂平昌五輪組織委員会委員長、梁韓国旅行業協会(KATA)会長など韓国を代表する観光関係者が来日し、日本の旅行業界関係者に、平昌冬季五輪への日本からの旅行商品造成を呼びかけた。
 今回の韓国観光関係者の来日を機に開かれた日韓の観光協議会では、韓国側から日韓観光交流人口を1000万人から2000万人に拡大することが提案された。日韓の相互交流人口目標を1000万人にすることは、昨年12月に熊本市で開催の日韓観光振興協議会で交わされた確認文書に盛り込まれた。韓国側は、韓国からの訪日旅行者の拡大を見て、強気の2000万人の数字が示されたと見られる。
 「韓国観光の夕べ」で、朴韓国訪問委員会委員長は「昨年韓国からの訪日客は500万人を超えた。今年は650万人が訪日する見通し。2020年の東京五輪には、間違いなく韓国から1000万人以上が訪日する」との予想を示した。
 その一方で、朴委員長は「日本から韓国への訪問者は350万人が最高記録。早い時期、2020年の前までには日本から韓国へ500万人が訪れると確信している。今後、両国間で1000万人、2000万人の時代が開かれるように共に努力していきたい」とアウトバウンドに対しても上昇する見通しを示した。
 つまり、2020年には韓国から日本へ1000万人、日本から韓国へ500万人、合計1500万人から2000万人が日韓観光交流人口の目標となるだろう。そうなると、日本からのアウトバウンド、訪韓客を増やすことが目標実現のカギを握る。
 二階全国旅行業協会(ANTA)会長/自民党幹事長は、全員が力を合わせて平昌五輪の成功、新しい日韓関係を築くために、新しい時代に向かっていこうと訴えた。
 日本からのアウトバウンドを拡大するには、韓国側の受け入れの問題がある。日韓合意がなされているにも関わらず、従軍慰安婦の問題が韓国で蒸し返されている状況では、日本から韓国へ旅行者が気分良く行ける状況ではない。
 韓国好きのFIT旅行者なら、何があっても韓国へ旅行するだろうが、旅行先にいくつもの選択肢がある場合、従軍慰安婦、朝鮮半島情勢などマイナス要因が多い韓国を旅行目的地として選択しづらい状況にあるのは確かだ。
 そうした中でも、訪韓日本人旅行者は昨年6月から今年3月まで10カ月連続でプラスと回復傾向を示した。2016年は前年比25%増の230万人。2017年に入っても3月までは二桁台の伸びを示していたが、4月は5%減と昨年5月以来11カ月ぶりにマイナスとなった。それでも1-4月累計は前年同期比15%増で推移している。
 4月のマイナスは朝鮮半島問題も影響したとみられる。いずれにしても、政治問題は韓国が新政権に移行し、今後の出方を見ていくしかない。
 日韓にはこうした様々な問題があっても、韓国からの訪日旅行者は増加している。前述のように今年は650万人を超える勢いを示している。既に、1-4月の韓国からの訪日旅行者数は前年同期比31%増の227万人。中国を抜いて訪日最大の市場を取り戻している。
 日本の人口から考えても、日本からの訪韓旅行者数が、韓国からの訪日旅行者数を上回ることが望ましい。2012年の訪韓日本人数は350万人。そのまま順調に行っていれば、既に500万人に到達していたはずだ。それが足踏みしている大きな要因の一つは、日韓の政治問題にあるだろう。
 2012年の海外旅行者数は1850万人と過去最高だった。菊間JATA副会長は、去る3月の「韓国旅行緊急復活フォーラム」で、「海外旅行者2000万人達成のためには、韓国の数字を元に戻し、増やしていくことが最も近道であり、2000万人マーケット達成に向けて韓国の数字を戻す」と語った。
 まずは、日韓の観光関係者で、過去は過去として、未来に向けて日韓観光交流拡大していくことを継続して訴えていきたい。(石原)