中近東緊急フォーラムに参加して
JATAアウトバウンド促進協議会(JOTC)も2年目を迎えて、活動に熱を帯びてきた。昨年は海外旅行需要の増加を追い風に欧州部会の「「ヨーロッパの美しい街道・道20選」、東アジア部会の「世界遺産級台湾30選」を選定など、商品造成に向けた具体的な活動が展開された。
この2つは最も注目されたが、その他にも各部会で「プランナーのためのセミナー」や、大学とタイアップして海外教養講座を開いた。また、ツーリズムEXPOジャパンでもアウトバウンドセミナーを開催した。
2年目の今年は、昨年の活動のブラッシュアップと新たな企画が検討されている。とくに、旅行会社企画担当者のためのセミナーの拡充が、最も期待されるところだろう。
今年度の「プランナーのためのセミナー」のテーマは「OFF期を売る」で、上半期は欧州のセミナーが多い。季節的なこともあるが、全体として、行動が活発な欧州のセミナーが中心となる。これを公平にバランスよく開催することがJOTCの課題の一つでもある。
そうした時に、JOTCは4月20日に中近東・アフリカ部会による「中近東緊急フォーラム」を開催した。同フォーラムはエジプト、チュニジア、トルコ3カ国に焦点を当て、旅行需要回復と今後の商品造成の拡大に向けて、登壇者とプランナーを中心とする参加者が真剣で熱い討論を繰り広げた。
前半の外務省邦人援護官の講演では、危険度を引き下げる理由の「中長期的、総合的判断」について質したり、カイロとアレキサンドリアを結ぶ幹線道路の渡航情報引き下げを求める要望が出たり、多くの参加者が聞きたいであろうことを質問者が代弁し、非常に分かりやすく進行した。
また、エジプト、チュニジア、トルコの3カ国の大使館関係者も日本市場の重要性を指摘するとともに、治安の安定を強調した。
モデレーターの中近東・アフリカ部会長の西山徹氏は開口一番、「一番のハードルは治安」と指摘。アラブの春による政情不安の広がりから情勢が安定化し、また、日本経済にとっても3カ国は生命線でもあり、3カ国の平和が日本の平和につながることを強調。西山氏は「旅行業界が先頭に立って交流拡大を図り、真の平和の実現に貢献しよう」と熱く呼びかけた。
パネリストとして参加した現地ツアーオペレーターの3氏は、現地最新情報や現地視察をもとに詳細なパワーポイントを作成し、詳しく説明したが、とても制限時間には収まらない実に中身の濃いものだった。
他のセミナーも同様だと思うが、こうした貴重なフォーラムを一過性のものにしてはならない。今回のセミナー参加者はもちろん、JOTC会員にセミナーの内容を全て公開し、共有化することが重要だ。
例えば、今回のフォーラムで講演者が作成したパワーポイントは現地の最新情報であり、貴重な資料集になる。講演者、作成者の許可が得られるならば、このデータをJOTCのウェブサイトにアップしたらどうか。今後の商品造成の貴重な資料となるはずだ。
また、このフォーラムをさらに深掘りしていくことが次回のセミナーにつなげることが重要だ。聞けば、次回は単独でのセミナーが計画されていると聞く。その時はさらに最新情報が出てくるだろう。
メディアを代表して、私もパネリストとして参加したが、知らないことも多く、とくに危険度が下がった時などの時宜を捉えて、記者会見などにより、現地の安全と実情を訴えることはできなかったかと悔やまれる。メディアに対して掲載の機会を逃すことは何とも惜しい。
今回の3カ国だけでなく、「安全」を世間に理解してもらうことが需要回復への道である。それができるのはJATAであり、そのチャンスを逃してはならない。(石原)