米本土に高額商品を
米商務省NTTO(ナショナル・トラベル&ツーリズム・オフィス)によると、2018年の訪米旅行者数は前年比3.5%増の7962万人で、トランプ政権の厳しい移民規制やセキュリティ対策に関わらず、成長を維持している。
しかし、そのうち日本人旅行者数は2.8%減の360万人と減少した。米本土旅行者は伸びているものの、ハワイが微増、グアムが2割減、マリアナが激減した影響が出たと見られる。
日本人の訪米旅行者数は、2011年の333万人から12年377万人、13年389万人、14年365万人、15年379万に、16年360万人、17年360万人、18年349万人と漸増減を繰り返し、結果的には3年連続マイナス傾向にある。
これがブランドUSAが指摘する「成熟市場」の根拠となろう。外国からの訪米旅行者のマーケットシェアは「新興市場」に押されて、日本は5%台から4%台に下がり、2018年は4.4%だった。
過去5年間の14年と18年を比較すると、カナダは2301万人から2121万人(7.8%減)、メキシコは1707万人から1852万人(8.5%増)、英国は365万人から465万人(27.4%増)、中国は222万人から299万人(34.7%増)、韓国は147万人から221万人(50.3%増)、日本は4.4%減と落ちている。
日本は4位の市場を保っているが、短期的にも、中期的にもマイナス傾向。それに対して、中国、韓国の新興市場は前年比では減少したものの、中長期スパンでは大きく増加している。
IPWアナハイムで開催された日米観光合同ミーティングで、日本側から2025年に日本人の訪米旅行者数500万人をめざす方針が示された。
そのために、どのような具体的な施策を打ち出すかだが、今回のIPWアナハイムでは、田端浩観光庁長官が出席しており、小泉政権時代のように、もう一度、政府間レベルで、日米観光交流促進のための覚書を交わしてもいいかもしれない。
民間レベルでは、米側が日本人旅行者数の停滞を見て、中国、韓国、インドなどの成長市場にプロモーション予算を投下しているので、他の諸国のように、官民合同で進めたほうが効果的なように思う。
訪米日本人旅行者が500万人を超えたのは2000年に遡る。この時は、ハワイに182万人、グアムに105万人、マリアナに38万人を送り込んだ。
これに対して、2018年はハワイ157万人、グアム56万人、マリアナ2.7万人。ハワイ、グアムは約50万人減少、マリアナは激減している。
今年はゴールデンウィーク10連休の波に乗り、日本人旅行者が1-4月で10%を超える増加を示しており、年間2000万人を超えることが予想される。
かつて、2000万人をめざしていた時は、そのうちのハワイの目標が200万人だった。それが、アジアへの旅行者数が増加して、2000万人の実現が目の前に見えてきている。
だが、訪米旅行者500万人をめざすには、まずはハワイへの送客を最盛期に戻したい。ANAのの380型機の3機投入が、今後どのように推移するかも注目されるが、JAL、ハワイアン航空、さらにはLCCを含めて、供給に見合う需要が増えれば、ハワイが伸びる可能性はある。とくに、ハワイ島をはじめとする隣島観光がハワイ送客増の鍵となる。
グアムも北朝鮮のミサイル問題から回復傾向にあり、今後、日本市場の代理店を変わる。これを機会に、新たなプロモーションの展開で、日本人旅行者回復への道を探りたい。
その上で、訪米旅行で日本が「成長市場」になるには、米本土旅行者数の拡大が最大のポイントになる。カリフォルニア市場の滞在消費額を見ると、中国が1位のカナダに肉薄しており、日本との差は大きく開いている。
日本の旅行業界が米国側に対して訴えるのは、人数もさることながら旅行消費額を増やすことで、リアルエージェントならそれができる。米国に対して高品質のパッケージツアーやインセンティブ旅行など、消費額の高い旅行者を送客することで、日本の旅行業界の存在をアピールし、日本市場を「成長市場」として再認識させたい。(石原)