記事検索はこちらで→
2019.08.05

日韓観光交流拡大は不変

 今年上半期(1-6月)の海外旅行者数は前年同月比8.6%増の954万2400人、訪日旅行者数は4.6%増の1663万3600人だった。海外旅行者数は順調に推移しており、下半期もこのペースで行けば、念願の2000万人は確実視されていた。一方、訪日旅行者数は現状の伸び率では来年の4000万人の到達には厳しいものはあるものの、来年のオリンピック開催時の需要拡大で目標に近づくという状況だった。
 しかし、日本人海外旅行者数2000万人、訪日外国人旅行者数4000万人の目標に陰りが見えている。
 香港の「逃亡犯条例」改正案をめぐるデモは、7月31日現在、いまだ解決策が見えない状況で、既に団体旅行者などに影響が出ており、その影響は香港だけでなく、香港経由のマカオにまで及んでいる。
 6月にデモが表面化し、香港への旅行者数が急激に減速している。香港と中国の「一国二制度」の体制をめぐる問題に発展しており、観光関係者としては、一日も早い収束を願うしかない。
 韓国への経済制裁に関する観光への影響は、日毎に拡大しつつある。政治問題から経済問題、日本製品の不買運動から日韓観光交流にまで影響が出始めた。
 今年上半期までは、訪韓旅行者数は前期比26.6%増の165万3600人と好調に推移。本紙のインタビューで、韓国観光公社(KTO)の安栄培社長は、このほど本紙の単独 インタビューに応じ、「今年は320万人を目標としていたが、第1四半期の状況をみると、2012年の352万人を超える好調ぶりを示している」として、当初目標を上方修正して「過去最多となる353万人の達成をめざす」方針を語った。
 一方で、訪日旅行者数は3.8%減の386万2700人で推移している。6月は0.9%増と微増ながらプラスに転じており、減少傾向にあるとはいえ、上半期の386万人は中国の453万人に次ぐ人数であり、前年並みに推移すれば年間750万人は行く。そうなれば、2019年は日韓観光交流1200万人時代が到来する。
 様々な政治問題を乗り越えて、この数字が残り半年を経て見えてきただけに、経済制裁による日韓関係の悪化が残念でならない。だが、こうした政府間の問題が起きたときこそ、民間レベルの交流が重要になる。
 しかし、草の根レベルの民間交流も中止や延期が相次いでおり、とくに日本の経済制裁に対する反発から、市民レベルの日韓交流を中断せざるを得ない雰囲気が醸成されているようだ。
 訪日旅行の自粛ムードを受けて、大韓航空が釜山−札幌線の9月からの運休を決め、アシアナ航空も9月中旬からソウル−福岡線などの機材小型化を発表した。
 LCCも訪日需要の冷え込みから、ティーウェイ航空は九州路線、イースター航空は釜山−大阪・札幌線、エアプサンは大邸−成田線の運休を計画する。
 日本旅行業協会(JATA)では、アウトバウンド促進協議会(JOTC)を通じて、「韓国絶品グルメ30選」を選定するなど、韓国へのツアー造成拡大に努めてきた。
 また、安KTO社長は「来年は、日韓国交正常化55周年で、東京オリンピック・パラリンピックが開催される節目の年を迎える。日韓両国の人的交流が継続的に拡大していくチャンス」との姿勢は変わらない。
 日韓が相互に重要な市場であることを認識している。安社長は日本政府観光局(JNTO)に対して、日韓両国の地方観光と青少年交流の拡大に相互協力していくことを提案。「日韓の観光交流の未来をさらに明るいものにしていくためには、関係機関の協力が不可欠。互いに努力して明るい未来を作りたい」と語る。
 日本国内はこうした状況でも、若い世代を中心に第3次韓流ブームは止まらない。若者のほうが「クール」だ。どういう状況であろうと、民間レベルでは、日韓観光交流事業を粛々と進めていきたい。(石原)