日韓の観光促進に行動を
8月の訪日外国人旅行者数が前年同月比2.2%減の252万人となり、11カ月ぶりにマイナスを記録した。とくに、訪日韓国人は日本政府の韓国への輸出規制強化に対する反発で、前年同月比で約5割減の31万人と大きく落ち込んだ。
この要因について田端観光庁長官は、7月から始まった団体旅行のキャンセルに加えて、LCCなどの減便に伴う個人旅行需要の減少が影響したと分析した。
また、日韓関係の悪化による訪日旅行手控えに加えて、ウォン安の影響などで7月以降、韓国人の海外旅行全体が減少し、さらにベトナムなどへの旅行先分散などの複合要因がが重なったと分析する。
韓国の海外旅行者数は、今年は3000万人を超えると予想され、多少減退気味ではあるもののアウトバウンド需要は旺盛だ。今回の要因は、韓国の輸出規制強化による訪日旅行の手控えが主であることははっきりしている。
日本政府は韓国からの訪日旅行がこうなることは折り込み済みで、滞在消費額の多い欧米、東南アジアからの需要が拡大し、人数ではマイナスになっても、消費額ではプラスになると見込んでいたのではないか。
業界団体のある幹部は、「韓国からの訪日旅行者は減少しても影響は九州などの特定地域で、全体として大きな影響は受けていない。むしろ影響を受けているのは、韓国の旅行会社や航空会社ではないか」と発言している。
観光業に携わる者として、九州や韓国の観光業者が天変地異や災害ではなく、日韓両政府のいがみ合いで窮地に陥っていることが大問題と思わないのだろうか。観光業界だけでなく、今回の一件で窮地に陥った事業者は、両国政府に賠償請求したいくらいである。
とにかく、日韓両国政府はほっといて、民間交流を進めて、リカバリーしなくてはならない。田端長官は、訪日旅行需要の早期回復に向けて、「SNSによる情報発信など、個人旅行客に対しては直接訴求できる取り組みに力を入れていくほか、タイミングを見計らって航空会社との共同広告を展開していくなどプロモーションを強化していく」との考えを示している。
「タイミングを見計らって」は引っかかるが、観光庁長官の発言は重いので、そう語るしかないとは思うが、一日も早い行動を期待する。
今の時点で、韓国に対する訪日プロモーションが難しいなら、この状況でも需要が旺盛な訪韓アウトバウンドを拡大する方法もある。とにかく、日韓相互交流の需要を維持しないと、供給がますます先細りになる。
田端長官も会見で、「日本から韓国への旅行者はやや鈍化しているものの、前年の実績を上回っている。そうしたことから、アウトバウンドのボリュームを増やしていけるような取り組みも行っていくことで、運休路線の早期の複便に結びつけていきたい」と述べている。
8月の訪韓外国人旅行者数は前年同月比14.0%増の159万人で、うち日本からの旅行者数は4.6%増の33万人とプラスを維持した。ただ、前月までは平均2割のプラスで推移しており、やはり日韓問題の影響はアウトバウンドにも出ている。
それでも、あれだけマスコミが大騒ぎして「反日・嫌韓」を煽り立てても韓国への旅行者はプラスを維持している。「雑音」に振り回されずに、自分の意志で、自分の好きな国へ行く日本の旅行者は見上げたものだ。
韓国観光公社(KTO)はこうした状況においても、「韓国クルーズ観光セミナー」を東京で開催している。年内にも新たな訪韓プロモーションを計画している。観光庁・日本政府観光局(JNTO)も見習うべきではないか。少なくとも、日本旅行業協会(JATA)はKTOと協力して、韓国へのアウトバウンドを促進していきたい。(石原)