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2019.09.30

グアムと旅行会社はWIN-WIN

 グアム政府観光局(GVB)は2018年を「グアム回復の年」と位置づけ、グアムへの日本人は前年比9%減の56万3200人まで回復した。これを受けて、GVBは2019年の日本人旅行者数を前年比13.6%増の64万人を目標とした。この数字は2017年の62万人を上回り、この目標を達成することにより、2017年の北朝鮮のミサイル問題の影響から完全に脱却することになる。
 2019年は全ての月で前年を上回っており、とくに8月は2014年2月以来の単月で7万5000人を超えた。このまま推移すれば、2019年は前年比25%増の67万人近くまで到達しそうな勢いを示している。
 航空会社は需要がダウンすれば供給を絞る。これはイールドマネジメントの鉄則だが、需要が戻れば、当然供給を回復する。
 2019年度のグアムへの座席供給量は、定期便が8%増の71万925席、チャーター便が156%増の15万1311席、合計20%増の86万2236席で、座席利用率も77%、需給バランスが取れている。
 グアムへの需要回復に伴い、航空会社もグアム路線の便数を再び増便しており、今後の需要拡大に期待がかかる。
 とくに、グアム路線を運航する中心的存在のユナイテッド航空(UAL)は、来年3月末の冬期スケジュールから、羽田から新たにアメリカ本土へ4路線を運航する。一方で、成田路線を重視し、1日3便の成田−グアム線の運航を維持する。
 ユナイテッド航空は、グアム路線を日本市場で競合他社への大きなアドバンテージとみている。同社は成田・名古屋・大阪・福岡の4都市からグアム路線を運航し、これら路線をジョイントベンチャーの全日空(ANA)とコードシェアリングを行っている。
 日本から一番近い海外リゾート、日本から一番近いアメリカであるグアムは、米国へ行く最初の入り口というべき場所。グアムでリゾートライフ、アメリカを経験してハワイ・アメリカ本土へ行く。その最初のステップなのかもしれない。
 その意味では、顧客層は赤ちゃん・キッズからシニア・シルバーまで全ての年代に幅広く受け入れられるデスティネーションだ。
 グアム政観では、日本市場のターゲット層をファミリー、学生、ウェディング、シニアに置いているが、シニアはシルバーを含めて「ハイエンド」に置き換えた。
 キャンペーンは、2020年も「インスタグアム」を継続し、海外旅行を牽引する女子旅層を中心に訴求する。また、ハイエンド層を中心に「ワンランク上のグアム滞在」を提案しており、グアムへの訪問者数とともに、滞在消費額の拡大に向けた取り組みを実施している。
 来年は「オリンピックイヤー」であり、東京五輪開催中の海外旅行の減少が懸念されており、この時期の需要創出に向けて、現在プロモーションを検討している。
 こうしたB2B市場とともに、グアム政観が力を入れているのがB2CのMICE市場や教育旅行市場。MICEでは、旅行会社に対してインセンティブなどの21-50人グループ旅行に対してサポート金額を設定している。
 修学旅行でもサポートプログラムを実施し、引率教員の下見費用の一部をサポートする。
 B2C市場を含めてグアム旅行の取り扱いシェアは既存旅行会社が7割を占めている。OTAの取り扱いは増えてはいるが、グアムは旅行会社のツアーが定着している。
 グアム政観では今後も「旅行会社とガッチリ組んで訪問者数、滞在消費額を増やしていきたい」としており、グアムと旅行会社はWIN-WINの関係で、グアム需要の増加は、旅行会社の取り扱い拡大につながる。(石原)