前例にとらわれない緊急経済対策を
新型コロナウイルスの国内感染者が拡大し、日本も海外からの水際対策と国内の封じ込め対策が強化された。但し、欧米・アジア諸外国と比べて、理由はどうあれ、対策が遅れたことは否めない。これから先が正念場だが、諸外国を見ると、「爆発的な増加」をしない方が不自然で、これから起きるのか、それとも実際の感染者が実は1万人を超えているのか分からないが、感染者の加速度的な増加から減速化に向かわないと、その先が見えてこない。
新型コロナウイルス感染症は欧州全体に広がったが、ここに来て、新たな感染者数は減速傾向にあるようだ。ただ、欧米からの帰国者からの感染などにより、アジアの感染者が再び拡大するとともに、南米・アフリカにも蔓延してきた。
新型コロナウイルス感染症から人命を守ることが最優先だが、経済も救済しなくてはならない。これを並行して対策を進めていくことが難しい時期に来ている。
新型コロナウイルス対策本部では、各業界にヒアリングし、それをもとに緊急経済対策の第3弾を実施する予定だ。
既に、4月から雇用調整助成金の助成率を引き上げ、正規、非正規を問わず雇用を維持する企業に対し、中小企業に90%、大企業に75%の助成率を引き上げることが決定した。欧州も10分の9程度の国が多い。
日本旅行業協会(JATA)は、雇用調整助成金の支給限度日数を100日から200日への延長を要望しており、緊急経済対策に盛り込むことを要望している。欧州では休業補償は3カ月、そして3カ月の延長も可能で、半年で180日。新型コロナウイルスの感染拡大を見ると、少なくとも半年間は必要ではないか。
今回の新型コロナウイルスでは、旅行業、宿泊業だけでなく、外出自粛により中小・小規模の小売業、飲食業などのサービス業も打撃を受けている。このため、日本商工会議所・東京商工会議所が政府に緊急要望を書を提出した。
それを見ると、「地域の経済社会活動は一段と制約され、自粛の連鎖により、幅広い業種の中小・小規模事業者の経営は危機的状況にある」として、雇用調整助成金の支給要件の緩和、助成率の引上げ、支給の迅速化を要望した。旅行業も同様で、事態は切迫している。
また、日商・東商の要望では、「倒産・廃業防止のため前例にとらわれない緊急対策の実施」が必要として、中小・小規模事業者の事業継続に資する大胆な給付金制度の創設を求めた。
安倍首相は給付金制度の創設について記者会見で、インバウンド事業者がひとつの念頭にあることを示唆している。しかし、ここまで危機的な状況の中で、給付金制度はインバウンド業者に限定せず、旅行・宿泊などの観光業を含む新型コロナウイルス感染症の拡大で影響を受けた事業者に対して、公平に遍く給付すべきだ。
赤羽一嘉国土交通大臣は、国土交通省新型コロナウイルス感染症対策本部で、政府の緊急経済対策の策定に向けて、「前例にとらわれない強力な観光需要喚起策の具体化」を進めるよう指示したが、観光需要喚起策を実行しようにも、その前に「プレイヤー」が疲弊してしまう。
危機的状況にある事業者に対して、雇用調整助成金を全額支給し、その期間は最低6カ月に延長する、現金給付金制度を創設し、運転資金に現金を給付する、実質無利子・無担保で最大5年間は元本返済が据え置きとなる特別貸付融資を民間金融機関でも実施する。これらの3点を含む緊急経済対策の第3弾の策定と、その実行のための補正予算編成を早期に取りまとめ、前例にとらわれない緊急対策支援策の第3弾を迅速に実行してほしい。(石原)