GWの先に旅行の未来がある
いよいよゴールデンウィーク(GW)が始まる。今年のGW期間は29日から30日、1日を休めば8連休、2日から7、8日を休めば9連休、両平日を休めば12連休、さらに27、28日を休めば10日まで16連休も可能という海外長期旅行の日程も組め、日本中が楽しみにしていたはずだった。
まさか、新型コロナウイルスの感染拡大で、海外旅行はおろか、国内旅行までできなくなるとは。これを2020年の年明けに予想した人はいなかっただろう。
安倍首相は4月21日の会見で、国民に対して、新型コロナウイルス感染拡大を抑えるため、ゴールデンウィークの国内旅行を控えるように要望した。4月7日に緊急事態宣言が発出されてから2週間が経過し、安倍首相は最低でも7割、極力8割、人との接触の機会を減らすことを目標に、「ゴールデンウィークも近づいてきたが、家族だけでも地方への旅行、遠出は控えてほしい。それが、全国への感染の拡散につながる危険性がある」と国内旅行の自粛を求めた。
4月21日までの厚生労働省の集計では、日本の新型コロナウイルス感染者数は1万1496人、死亡者数は277人。緊急事態宣言から2週間が経過して、その効果は出ている。16日には7都府県から全国都道府県に緊急事態宣言を拡大、13都道府県を特定警戒都道府県に指定し、ゴールデンウィークの旅行、外出を自粛して、「感染爆発」を抑え込む「作戦」だ。
ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(JHU-CSSE)が集計する世界各国の新型コロナウイルスの感染状況を見ていると、感染が二極化していることが分かる。発生源の中国は中国側の発表を見る限り、感染はほぼ落ち着いている。欧州、オセアニアが落ち着きはじめ、感染が一挙に拡大した韓国も1日一桁台の感染者で推移している。
最大の感染者を出している米国は、毎日の感染者数は依然として多いが、ピークは脱した感がある。トランプ大統領は、早くも3段階による「アメリカ再開」を発表した。中国が経済再開に動き出している状況を見て、一日も早く経済活動を再開したい本音を隠さない。
新型コロナウイルスの封じ込めに成功しているドイツは、メルケル首相が制限措置の緩和に関する連邦政府と各州政府の間の合意事項を発表し、5月4日から学校の一部再開、条件付き店舗の営業再開などが認められる。国内外の旅行については引き続き行わないように求めるが、次の段階では認められる模様で、4月30日には次の段階的措置が決定される。
新型コロナウイルスの感染者が収まっている韓国では、自国民に海外旅行の中止や延期を求める「特別旅行注意報」を1カ月延長し、5月22日までとした。このまま推移すれば、5月23日からは旅行が大きく動き出す可能性が出てきた。
こうした経済再開の動きの一方で、これから感染者が拡大する懸念の国・地域がある。まずは日本で、外出禁止の強制力を持たない我が国では、自粛の実行が国民に求められるが、今はその「分かれ目」に来ている。感染爆発が起きれば、経済再開に遅れを取る。
旅行業界としては、最大のかきいれ時のゴールデンウィークに、海外旅行のみならず、国内旅行も自粛は本当に痛いが、ここが正念場となろう。とにかく休業による雇用助成金などの支援策で耐え忍ぶしかない。
日本のほかにもトルコ、ロシア、インド、メキシコ、アフリカ各国は加速度的に増加している。また、これから冬場を迎えるオーストラリアなども今後の推移に注目する必要がある。
観光は双方向交流でなければならない。欧米、中国、韓国などが観光交流に動き出した時に、日本は遅れを取ってはならない。そのためには、ゴールデンウィークまでに感染を抑えることが必須だ。世界各国が夏休みに向けて旅行に動き出す時に、日本も軌を一にしてスタートしないと、日本のツーリズム産業はより一層厳しい状況に置かれるだろう。(石原)