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2020.12.11

WING

現代の奴隷制度・人身取引に航空機悪用されることを防げ!

世界4000万人が被害者に、日本でも多発する人身取引

 現代の奴隷制度ともいえる人身取引に、航空輸送が悪用されている---。被害者は時に自分が被害に合っていることすら分からず、遠い異国の地へと連れてこられて、パスポートなどを取り上げられ、常に監視されながら強制的に搾取され続けている。航空業界も一丸となってこの巨悪に立ち向かっていく必要性が高まっている。そうしたなか12月10日の世界人権デーにあわせて、ANAホールディングスが主催した「航空業界全体で、飛行機を利用した人身取引を防ぐ!~航空業界で働く私達が出来ること~」と題したセミナーが成田国際空港会社(NAA)本社で開催された。全日空(ANA)、日本航空(JAL)、NAAのほか、国際航空運送協会(IATA)、警察庁、国際移住機関(IMO)のメンバーが集まって、この問題について議論を繰り広げた。
 IMO駐日事務所の清谷典子プログラム・マネージャーによれば、人身取引の被害者の数は実に4000万人にも達しており、そのうち2500万人が強制労働の被害者となって搾取されている。被害者の70%が女性で、62%がアジア太平洋地域に集中。約半分の被害者が債務によって拘束を受けたかたちで強制労働させられているという。
 航空業界では昨今、社員向けの研修やセミナーの開催、さらには撲滅キャンペーンを展開するなどの動きを加速して、人身取引防止に向けた取り組みを強化している。
 そうしたなか日本国内では、ANAグループが2018年にグループ社員に人身取引に係るeラーニングをスタート。19年4月には機内で人身取引と疑われる事象発見時の手順を規定化へと踏み切るなど、逸早く行動を起こした。一方、JALも19年7月に策定したグループ行動規範のなかで、航空機を用いた人身取引防止に向けた取り組みを盛り込みつつ、機内における通報要領を設定。2019年度下期中に研修を実施、今年4月から通報要領の運用を開始した。
 また、NAAでもスタッフの講習会・研修会を開催したほか、人身取引問題の認知度向上に向けたポスターやリーフレットの作成、さらにはIATA、世界空港評議会(ACI)、国連薬物犯罪事務所などと連携キャンペーンを展開するなど、取り組みを強化している。

 

「気付き」・「アクション」の大切さ
人身取引しずらい国という意識を犯罪者に植え付けを

 

日本国内で過去10年間に355名が被害者に
警察庁が明かした国内の被害実例

 

日本着便機内から通報の好例
事件性無しも気付きと行動の大切さ

 

コロナ禍ではオンライン上虐待増加

 

※写真=航空業界関係者が集まって人身取引防止に関するセミナーが開催された。この問題の認知を広げ、一人ひとりの気付きとアクションの重要性などが訴えられた