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航空自衛隊、さらなる女性の進出、WLBの推進を目指して
女性隊員の目覚ましい活躍、性別より個性重視へ
少子高齢化が進み、人材不足が叫ばれるようになった昨今、これまで家庭環境によって仕事をリタイアすることが多かった女性人材を獲得するため、さらには男女問わずより充実した社会を実現するため、政府を挙げて男女共同参画の施策を打ち出している。それは、防衛省・自衛隊でも同じで、より優秀な人材を獲得するため、「防衛省における女性職員活躍とワークライフバランス(WLB)推進のための取組計画」を策定して、“働き方改革”、“育児・介護等と両立して活躍できるための改革”、“女性職員の活躍推進のための改革”を進めているところだ。そのため、陸・海・空の3自衛隊では近年、女性職員の目覚ましい活躍とともに、職場環境の改善が進んでいる。中でも航空自衛隊では、1993(平成5)年に一部を残して女性の配置制限を撤廃し、2015(平成27)年にはすべての制限を撤廃して、最も早く男女問わず採用できる体制を確立した。空自はこれまで、いかにして女性職員の活躍とWLBの推進に取り組み、今後どのように拡大していくのか———。航空幕僚監部人事計画課長の徳重広為智1等空佐に話を聞いた。
15年に空自全職域解放
17年度末には女性割合約7.6%
徳重課長によると、航空自衛隊として最初に女性自衛官を採用したのは1974(昭和49)年で、それから徐々に女性隊員が増え、1993(平成5)年になると、すべての職域に女性の登用を解放した。ただしこれは、操縦職域の中の一部として、戦闘機および偵察機だけは制限が残る状況が続いていた。その理由は「やはり航空機の操縦には“G”がかかる特殊性から、母性の保護のため」だったという。さらに当時、女性は結婚・育児に伴って退職してしまうケースが多い時代でもあった。そのため「せっかく育成した操縦者が若くして辞めてしまうと、経済的効果も悪くなる」ことから、戦闘機・偵察機の操縦者には、しばらく制限が続いていた。しかし昨今の、女性進出が増えてくる中で、出産・育児を援助する施策が充実してくると、離職率が減るようになった。さらに、戦闘機・偵察機以外でも航空機の女性操縦者の活躍が増えてくると、母性の保護については、本人の管理と組織的なフォローによって補えることが分かったという。そこで航空自衛隊としては、2015(平成27)年に実質、制限をすべて解放して、あらゆる職域で男女問わず採用できることとなった。
陸上・海上自衛隊に先駆けて、全職域で女性の制限が撤廃された航空自衛隊では、直近の2017(平成29)年度末に、女性割合が約7.6%、約3350人に達したとのこと。それまでを振り返ると、平成になってから10年間ほどは約3.5%で横ばい状態が続いていた。しかし政府が1999(平成11)年に男女共同参画基本法を施行すると、徐々に女性の割合が増加。2014年には航空自衛隊単独で省平均の6%程度になった。それ以降も、さらなる女性の活躍による精強化に努めたことで、省全体を上回る女性隊員の割合となった。
防衛省全体としては、2015年時点の女性割合は6%で、達成目標として今後2030年度までに10%の達成を目指す。この達成目標に関しては、航空自衛隊単体で見れば、前年度末ですでに約7.6%となっていることから、これは十分達成可能な数字といえる。
※写真=仕事と家庭の両立は、自ら率先して誰かをサポートすること、人間関係が特に重要だと話す