動き出した海外・訪日旅行
海外旅行、訪日旅行が動き出した。10月1日からGo Toトラベル事業に対象外だった東京が加わり、国内旅行は回復に向けてジャンプしたが、海外・訪日旅行も同じく10月1日から国際的な人の往来を段階的かつ本格的に再開させる方針を発表した。
菅首相は「経済再生のためには、国際的な人の往来再開が不可欠」と強調、「菅内閣として10月以降、観光客以外は日本人、外国人を問わず、検査をしっかり行った上で、できる限り往来を再開していく方針で臨む」と明言した。
その言葉通り、10月8日から日本と韓国の間で、商用目的の短期滞在者向けのビジネストラック、在留など長期滞在者向けのレジデンストラックを実施することで合意した。ビジネス/レジデンストラックの運用は9月18日からのシンガポールに次いで韓国が2カ国目となる。
現在、日本とレジデンストラックを実施している国々はタイ、ベトナム(7月29日)、マレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、台湾(9月8日)、シンガポール(9月30日)、ブルネイ、韓国(10月8日)の10カ国・地域。また、豪州、ニュージーランド、中国、香港、マカオ、モンゴルとも調整段階にある。
ただ、10月1日より全世界から観光客以外の新規入国を許可する方針で、レジデンストラックはこれまでのような二国間の交渉を行わずとも受け入れる方針を示しており、10月1日から原則として全ての国・地域を対象に、長期滞在のビジネス渡航、留学、家族滞在等の対象者を順次、新規入国を許可していく。ただし、入国者数は限定的な範囲に留める。
また、出国前検査証明(入国拒否対象地域のみ)、入国後14日間の自宅等待機、公共交通機関不使用等の防疫措置について、受入企業・団体が誓約書を通じて確約することが条件となる。
そうなると、今後の二国間交渉は韓国とのようにビジネストラック(合わせてレジデンストラック)を結ぶことが焦点となる。豪州・NZはオセアニア地域の国際往来を進めており、次なる段階としてアジアを位置づけていると見られる。
注目は最もビジネス渡航の多い中国・香港・マカオだが、韓国の次は最もビジネス渡航の多い中国・香港・マカオ市場の往来再開が期待される。また、ハワイやグアムも長期滞在者はレジデンストラックで行くことができる。
ビジネストラックならば、活動計画書の提出等を条件に、日本への帰国後の14日間の待機期間中も、公共交通機関は不使用ながら、活動計画書に基づき、自宅と勤務先の往復等の行動範囲を限定した形でビジネス活動が可能になる。日本から渡航する日本人は相手国への滞在期間が14日間以内の場合には、日本入国時の検査証明の取得も不要になる。
ビジネストラックに合意すれば、旅行業界などは当該国へのファムツアーが容易になり、観光旅行への道が開ける。菅首相が語った「観光客以外は日本人、外国人を問わず、検査をしっかり行った上で、できる限り往来を再開していく」ということは、その次が「観光客」、つまり観光渡航の再開ということだ。
既に、ビジネストラックが始まったシンガポール、韓国、レジデンストラックが始まり、ビジネストラックの開始が予想される台湾・東南アジア諸国などは、観光マーケットの再開に動き出している。アジア諸国は、日本市場に対してプロモーションを始めており、この機を逃さず、「先んずれば人を制す」ではないが、ビジネスの次は日本の観光市場をいち早く取り込むことに注力している。
アウトバウンド(海外旅行)とインバウンド(訪日旅行)は「対」だ。菅首相は2030年の訪日外国人旅行6000万人の堅持を赤羽国土交通大臣に指示した。日本が地方創生のために訪日旅行の早期回復を図るように、諸外国は日本に自国への旅行誘致を求める。Go Toトラベル(国内旅行)の次は、Go Toトラベル(海外・訪日旅行)の展開を期待する。(石原)