コロナ禍とGo Toトラベル
2020年はコロナに始まり、コロナに終わった年だった。2021年もコロナは続くだろうが、この未曾有の苦しい環境がいつ終わるのかは誰も予測できない状況だ。
本コラムで、2018年を「災害の年」、2019年を「大災害の年」と記した。50年に一度、100年に一度の激甚災害が頻発し、2020年は台風被災地の観光支援、火災被害の首里城・沖縄の観光支援の必要性を訴えた。
その意味では、コロナ禍の中で「ツーリズムEXPOジャパン 旅の祭典 in 沖縄」を開催は、沖縄の観光振興に貢献したことは高く評価したい。
海外旅行は2020年を「ポスト2000万人の幕開け」として、さらなる高みを期待した。ところが、2020年は新型コロナウイルス感染症という世界中の経済を麻痺させるかつてない危機が待っていた。とくに、国際往来が止まり、旅行・航空・運輸・宿泊・観光施設などのツーリズム産業は瀕死の状況に今も喘いでいる。
2020年の漢字一字は「密」だったが、個人的に浮かぶのは自粛の「粛」やコロナ禍の「禍」など、辛い文字ばかりだ。いずれも今年を象徴している漢字で、2020年は「コロナ」以外はすべて吹き飛ぶ年となった。
そうした中で、ツーリズム産業で最も注目したいのは「Go Toトラベル」事業だ。国内・海外・訪日の旅行が全て止まり、売上がほぼゼロになったツーリズム産業にとって「光」となったのはGo Toトラベルだった。
これによって、国内旅行が復活、回復し、ツーリズム産業は一息ついた。当時の菅官房長官、赤羽国土交通大臣が語った「全国900万人の観光事業者を救う」という言葉は、どれだけツーリズム産業界にとって有り難かったことか。Go Toトラベル事業に携わった観光庁、事務局、さらに事業者に敬意を表したい。
一方で、Go Toトラベル開始前の事務局問題から始まり、感染が再拡大してからのGo Toトラベル停止の「大合唱」は、日本の「大衆迎合」の恐ろしさをまざまざと見る思いだった。Go Toトラベルを感染拡大のスケープゴートにしたことを忘れることはできない。
最後までGo Toトラベルを継続しようとした菅首相は「Go Toトラベルが観光事業者の経営、地方経済の回復に果たす役割は十分に認識するものの、新型コロナウイルス感染拡大、年末年始の医療体制を鑑みて決断した」と述べ、12月28日から来年1月11日までのGo Toトラベルの全国一斉停止を決断した。
それでも、菅首相は分科会による「移動によって感染は拡大しない」という提言を引用し、Go Toトラベルで感染が拡大することは否定した。既に、Go Toトラベルを5000万人以上が利用しているが、感染者が拡大したり、クラスターが発生した報告はない。専門家と称する人々には、「Go Toトラベルに感染拡大のエビデンスはない」ということに対して、これからも質したい。
年末年始のGo Toトラベルが停止したことで、観光関連事業者の経営が懸念される。これに対して、赤羽国土交通相は、「コロナ禍で大変な苦境に陥っている観光関連事業者への負担軽減を図るため、年末年始の特別措置として、キャンセルとなった場合の事業者への支払いを一律50%、上限2万円に引き上げる」と救済措置を発表した。
赤羽大臣は「ようやくGo Toトラベルでコロナの影響から立ち直りつつあった観光関連産業を所管する大臣としては、まさに苦渋の決断」と語る。
来年もGo Toトラベルは続き、6月までの延長が決定している。Go Toトラベルにより国内旅行需要が喚起され、前年水準レベルまで戻ったことは間違いなく、国内旅行の魅力も改めて見直された。
次は、海外旅行、訪日旅行の回復だ。2021年は「海外旅行再開の年」としたい。感染症の減速が前提となるが、東京オリンピック・パラリンピックの開催を起爆剤に、国際往来が再開し、海外・訪日旅行が復活することを願ってやまない。(石原)