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2021.02.22

WING

JAXA航空、研究開発領域で新たにDX・自律化を柱に

コロナで民間が苦しい局面だからこそJAXAが新技術先導

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)航空技術部門が、2022年度からスタートする5カ年の研究開発計画期間(2022-2026年度)において、その研究開発領域に新たにデジタルトランスフォーメーション・自律化を加えた4本柱とすることを検討中だ。JAXA航空技術部門の研究領域は現状、環境(ECAT)、安全安心(STAR)、そして新分野創造(SkyFrontier)の3本柱となっている。今年6月には文部科学省の航空科学技術委員会に次期研究開発計画の最終報告を提出する予定にあって、今後は6月に向けて研究計画の具体化のほか、研究開発を実施するために必要な大型試験設備、人材育成などといった研究環境に関する検討を深掘りしていく方針だ。
 航空科学技術委員会は去る2019年10月に、航空科学技術分野に関する研究開発ビジョンの中間とりまとめを行なっており、この中間とりまとめをベースにJAXA内およびJAXAが設置した外部有識者委員会を通じて最終とりまとめに向けた検討が進められている。
 ただ、誰も予想し得なかった新型コロナウイルスパンデミックの発生など、航空科学技術委員会が中間とりまとめを行なった時点から、航空業界を取り巻く環境は激変してしまった。新型コロナウイルスが航空業界に与えた影響は想像以上に深いことから、JAXA航空技術部門の研究開発計画最終報告に向けて認識をあらたに、その検討を進めている様相だ。
 航空業界を取り巻くアフターコロナに向けた動きとしては、世界各国でカーボン・ニュートラルを目指す動きが加速してきており、例えば国際民間航空機関(ICAO)では規制によって、2021年以降、設定値を超えたCO2排出量を航空会社が購入する義務を設けている。さらに日本でも菅首相がカーボンニュートラルを2050年に達成することを目標として提示し、政府のグリーン成長戦略のなかでも航空分野について電動化・水素航空機、軽量化などに関する工程表が示された。
 JAXAはこうした動きに言及しつつ、「コロナ後の回復を見据えると、CO2排出低減や超音速といった高付加価値を目指す動きが重要だ。とくにコロナ影響で民間企業は非常に経営上苦しい局面にある」としつつ、「JAXAは公的研究機関としてこれらの新技術を先導していく必要がある」との認識を示している。

 SDGsとカーボンニュートラル加速
 「持続可能」をキーワードに設定

 これまでの議論のなかでJAXA航空技術部門の目指すべき方向性としては、次期科学技術・イノベーション基本計画で核となっているSDGs、コロナ影響もあってカーボンニュートラルへの動きが加速している現状などを踏まえ、「持続可能」をキーワードに設定。さらに研究開発ビジョン中間取りまとめにも盛り込まれた未来社会デザイン・シナリオを踏まえ、航空輸送(従来の使われ方)、航空利用拡大(新しい使われ方)、航空産業の3つの分野で、JAXA航空技術部門が目指す将来像を設定した。
 その将来像は具体的には、・・・・・・・・。
 
 目指す将来像実現向け4重点課題
 水素は最終報告までに具体化へ

 En-Coreプロジェクト継続、その先に電動BLI
 将来は複合サイクルエンジンで水素利用も

 
 超音速機、全機ロバスト低ブーム設計など重点課題に

 空の移動革命で有人・無人機混在の運航管理システム
 空飛ぶクルマなどマルチエアモビリティ混在実現に貢献
 3段階でDX技術、国際競争力確保へ
 まずはデジタル統合設計や地上試験代替など

※画像=これまでの航空科学技術委員会の中間とりまとめやコロナ禍を踏まえ、JAXA航空技術部門では「持続可能」をキーワードに次期研究開発計画をまとめる。2050年頃にはCO2排出ゼロとすることを目指す研究開発も鍵だ。画像はJAXAのエミッションフリー航空機のイメージ(提供:JAXA)