【潮流】JATAは「全会員の集合体」
6月21日に開催された日本旅行業協会(JATA)定時総会は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が2年目を迎えた中での開催となった。今年の総会では、坂巻伸昭会長の言葉が強く印象に残った。JATAを「全会員の集合体」と位置づけ、会員のために「旅行業協会に何ができるのかをしっかり考えていきたい」と語った。
坂巻氏は昨年の6月、コロナ禍の最中にJATA会長に就任した。未曾有の環境の中での船出となり、その後、病気を患いながら、東武トップツアーズ社長とともにJATA会長を務め、激務の中で旅行業界を牽引してきた。
坂巻会長は今回の定時総会で会員を前に、闘病を続けていることを明らかにした。そして、「皆様には大変ご迷惑をおかけしていると思うが、これは私のわがままとしてぜひ受け入れて頂きたい」と述べ、会長を継続することの決意表明をした。
正直、胸が痛む。激務だけに闘病に専念してはどうかとも思う。しかし、全会員のために「次の旅行業をぜひ一緒に作り上げていきたい」という坂巻会長の並々ならぬ決意表明を聞くと、これはJATA役職員、全会員が支えて、コロナ禍を乗り切っていくしかないと思った。
いま、JATAが全会員のために取り組むべき喫緊の課題は何だろうか。まず第1は、雇用調整助成金の特例措置の延長だろう。定時総会で会員から質問があったのも、雇用調整助成金の受給期間の延長についてだった。
コロナ禍が1年5カ月を経て、旅行業、とくに海外旅行事業者は売上ゼロの状態が続いている。現預金も底をついてくる。頼みは雇用調整助成金や一時給付金となる。質問者は飲食業の厳しい現状は一般に伝えられているが、旅行業の経営環境が非常に厳しいことを世間にもっと伝えてほしいと訴えた。
これに対して、坂巻会長は雇用調整金の受給期間の延長を政府に働きかけていることを説明、今後も旅行業界の経営継続のために要望していくことを約束した。坂巻会長はJATAの大きな3つの役割の一つとして、政府、自治体、関係機関との調整機能を挙げており、旅行業界の経営支援は最重要として取り組む。
志村格理事長は「旅行業はコロナ禍で最も厳しい経営状況にあるものの、それが見えにくいのが課題」と指摘。雇用調整助成金の年末までの延長を要望していることを説明した。22日には雇用調整助成金の受給期間が年末まで延長されることが決定した。
第2は、海外旅行の再開だ。海外旅行業の専業者は、Go Toトラベルの恩恵もなく、海外旅行が再開しなければ売上ゼロの状況が今後も続く。訪日インバウンドを含めて、ワクチンパスポートによる国際往来再開の道筋をつけなくてはならない。とくに、ワクチン接種完了者に対しては、互恵に基づき、日本に帰国・入国の際は14日間の自主隔離免除を働きかけていきたい。
JATAは2021年度事業の重点事項として、「国際交流の速やかな再開のキーとなるヘルスパスポートの促進」を挙げており、その鍵となるのが14日間の自主隔離免除であり、政府・自治体・関係団体、一般消費者を巻き込んでムード醸成を図りたい。
第3は、Go Toトラベルの再開だが、国内旅行は夏に向けて予約は好調に推移している。再開時には「Go Toトラベル」の名称はやめてはどうか。旅行業界だけのためにあるような誤解を生んでいる。災害時には「ふっこう割」があったが、Go Toトラベルは「地方経済の下支え」に大きな効果があった。地方経済再生のための手段であり、コロナ禍からの観光復興事業として再開を期待する。(石原)