【潮流】ワクチン打ったら旅に行こう
日本旅行業協会(JATA)がウィズコロナの旅行として企画し、旅行会社8社が9コースで実施した「新」感染対策モニターツアーは成功裡に終わった。ツアーの前にPCR検査を受けて参加、受け入れ側も感染対策に万全を期し、安心・安全なツアーが催行された。
Go Toトラベルキャンペーンに対して、人流が感染拡大の要因のように言われ、旅行そのものが批判を受けたが、こうした感染防止対策を施せば、安心・安全に旅行が可能なことを立証してくれた。
ただ、PCR検査付きのツアーで、行程中も安心・安全、衛生面にも気を使い、徹底的な感染防止対策を実施すれば、価格面で高騰することは致し方ない。したがって、高品質、高価格な旅行商品ならば可能だが、低価格なツアーではこうした「新」感染対策モニターツアーは難しいとの課題も指摘された。
それでも、旅行に行きたいのに新型コロナウイルスの感染に不安があって、これまでためらっていた旅行者は、事前のPCR検査によって不安が和らぎ、「旅行に行ってみよう」と前向きになったことは大きな前進ではないか。一方で、輸送・宿泊・飲食などの観光業者も旅行者を安心して受け入れることができるようになる。このことだけでも「新」感染対策旅行のメリットは大きいように思う。
「新」感染対策モニターツアーは、高齢者の旅行意欲を後押しすることがわかった。このモニターツアーは、事前のPCR検査による陰性者のみが参加することが最大のポイントだが、次はワクチン接種者を対象にした「新・新」感染ツアーが出てくるだろう。
高齢者のワクチン接種が本格化している。厚生労働省によると高齢者のワクチン接種者は1694万人に達している。うち2回接種者も302万人に上る。この夏には高齢者のワクチン接種完了者対象の「ワクチンツアー」が登場するだろう。
既に、ワクチンキャンペーンツアーの検討に入っている旅行会社もあり、ワクチン接種完了者に対して特典を付けたツアーなども造成されそうだ。
海外では、ワクチン接種者に対して現金や車だどが当たる高額なキャンペーンを展開しているが、国内でも地方自治体が宿泊施設、飲食店の割引、飲食店では、飲料の割引、デパートなどでも割引キャンペーンを実施し始めた。
ワクチン接種完了は、PCR検査の陰性以上に旅行意欲を向上させる。とくに、旅行に対して我慢に我慢を重ねているだけに、ワクチン接種で旅行マインドが爆発しかねない勢いになりそうだ。
国内旅行はワクチン接種を完了した高齢者のツアーを手始めに、夏から秋にかけてはワクチン接種を終えた若い世代が旅行に出掛ける。PCR検査は費用が掛かるが、ワクチン接種は無料だ。Go Toトラベルキャンペーンがなくても、旅行がブームになり、「ワクチン打ったら旅行に行こう」のムードが醸成される予感がする。感染拡大に配慮しながらだが、いろんなキャンペーンが展開されるだろう。
この「ワクチン打ったら旅行に行こう」のムードを海外旅行の再開に繋げなくてはならない。旅行好きの高齢者は、海外に行きたいのに、コロナ禍で国内に行っている人は多い。ワクチン接種完了の高齢者を対象に、海外「ワクチン接種モニターツアー」の催行を検討してほしい。
現状では、帰国後14日間の自主隔離が義務付けられるが、比較的日程に余裕のある高齢者が海外へ行き、SNSなどで情報発信してもらう。とくに、訪問国・地域がワクチン接種完了者に対して隔離免除になっているのに対して、帰国後の14日間隔離が義務付けられる日本との違いを旅行者に指摘してほしい。
「ワクチン打ったら海外旅行に行こう」を高齢者が発信するほど効果的なことはない。ワクチン接種完了者に対しては、帰国後の14日間隔離免除を実現しなくてはならない。そのためにも早期にワクチンパスポートを導入し、国内旅行の本格化、海外旅行、訪日旅行の再開につなげたい。(石原)