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住友商事、製造業の獲得で“肉厚”な提案に成果
異なる収益構造に対応、世界と戦えるメーカーへ
住友商事は、昨年5月に航空機ランディング・ギア(降着装置)や航空エンジン熱交換器など、航空機部品を製造する住友精密工業の筆頭株主となった。航空宇宙事業部の日下貴雄部長は、これまで出向者9名の派遣、株主としての支援・協業を通じて製造事業に取り組む中で、改めて「異なる世界が見えてきた」という。
例えば新規事業投資規定や審査プロセスなど。住友精密工業に対して投資に至るプロセスや、審査基準などを住友商事からフィードバックし、「経営体制の骨密度」を高めてきた。また、商社としても、住友精密工業が持つ製造や修理能力、住友商事が持つ欧米大手OEMとの過去からの関係を掛け合わせることで、OEMに対するバリュー提案が「肉厚」になった。新しい商材がテーブルに乗ることもあり、成果が現れ始めていると、好転している状況を歓迎した。
「ミーティア」の予算化期待
日英戦闘機開発も実現に協力
防衛の国際共同開発の分野では、住友商事として英国との関係を主軸に置いて活動していることが特徴の一つとなっている。近年では、空対空ミサイル「ミーティア」の日英共同研究プログラムが予算化されたところで、今年9月ごろに最初の契約となる見込み。これは今後に続くものと見て、期待値は高い。
そして英国側はここで、戦闘機開発プロジェクト「テンペスト」の発表を行った。これには住友商事としても、ユーロファイターのころから欧州戦闘機への協力を行っているとして、日本にとってメリットも大きく注目しているという。しかし戦闘機商戦は、政治環境ですべて決まってしまう傾向にあり、日米同盟が中核となって動いている状況だ。
日下部長は、実現可能性を踏まえて「テンペストも一部で米国との共同開発が加われば、面白い」との見方を示した。戦闘機開発は、国内で開発していくことを前面に出しつつ、その裏で英国がサポートする図式になるのが、日本にとって一番良い環境といえる。防衛省ではすでに要素技術の開発などで、数百億円を投入している。そのため、この取り組みを活かしつつ、技術開示が進んでいる英国など欧州とパートナーシップを組んで開発を進める意義はある。今後、共同開発実現に向けた協力について、意欲を見せた。