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2021.11.17

WING

第141回「日本が危ない」外交・安全保障戦略の現実を見よ

衆院選に中露艦艇周回の衝撃
野党敗退は共産党協力理由か

 

 中国とロシアが軍事協力関係を強化している。日本が衆院選に突入していた10月23日、対馬海峡、津軽海峡を通り太平洋を南下していた中国とロシアの海軍艦艇10隻が大隅海峡(鹿児島県)を通過し、東シナ海に入った。日本列島をほぼ一周した形となったことは、日本国内に大きな衝撃を与えた。31日の衆院選での与党勝利にも少なからず影響を与えた。
 衆院選はふたを開けてみると自民党が単独で絶対安定多数(261)を上回る結果となったが、開票直前、首相岸田文雄は推薦を含めてやっと過半数(233)に届く程度と40議席以上の大幅減を覚悟していた。前首相菅義偉に至っては「俺が辞めた意味がない」と周辺にもらしていた。実際の議席数以上に僅差の勝利だったことは野党の惜敗率90%超が34選挙区に上ったことからもわかる。
 野党第一党の立憲民主党が伸び悩んだ理由として挙げられるのが、日本共産党との選挙協力だ。「自衛隊違憲、日米安保条約破棄を掲げる日本共産党と立憲民主党が組んだことに保守系無党派が反発した影響は大きかった」と自民党選対関係者は解説する。
 「人の悪口は言わない」ことをモットーとしている岸田は選挙戦序盤、他党の批判をするのを控えていた。だが、日本共産党が政権入りするかもしれないことについて言及しないのは事態の深刻さを理解していないとの不満が自民党内から出ていた。そこで岸田も終盤になって「立共合作」批判を展開したのだった。
 投票直前の29日夜、岸田はジャーナリストの櫻井よしこが主宰するネット番組「言論テレビ」に出演し、「北朝鮮が弾道ミサイルを発射する。中国、ロシアの艦隊が日本列島の周りで訓練をしているという不透明な状況にある中で、国民の命や暮らし、平和を守れるのが政権だ。共産党と手を組むことによって本当に責任を担うことができるのか」と述べ、日本を取り巻く安全保障環境が悪化する中で、立憲民主党と日本共産党の連携に強い危機感を表明した。

 

防衛相、強いアピールが奏効
垣間見えた中国の本気度

 

 中露の共同演習に対し、日本政府の中で最も反応したのが防衛相、岸信夫だった。岸は26日の記者会見で「我が国周辺における中露両国の大規模かつ長期間にわたる活動は、初めての確認で、極めて異例なことである。我が国近傍において、10隻もの艦艇により軍事演習を行い、我が国を周回させる形で航行したことは、我が国に対する示威活動を意図したものと考えている。このような行動は、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることを如実に示すものであって、地域の平和と安定の観点からも重大な関心を持って注視すべきものだ。我が国が自由で民主的な国として繁栄を続けていくために、国としての独立を全うし、国民の生命・財産を守り抜くことは当然の前提となる」と述べ、防衛力強化に努める考えを強調した。
 防衛省幹部によると、岸は強いメッセージを出すことにこだわったという。衆院選の最中であり、断乎とした意志を内外に示す必要があると判断したのだった。

 

中国航空機・艦艇の動き(防衛白書より)

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