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IHI瑞穂工場、民需は急ピッチでPW1100G-JM整備急増に対応
防需のF135最終組立含め施設整備が進む
IHI航空・宇宙・防衛領域は相馬第1、相馬第2、呉第2、瑞穂の4工場を生産センターの傘下として展開している。このうち瑞穂工場は東京都西多摩郡瑞穂町に所在し、航空機エンジン及びガスタービンの最終組立と運転試験を主とした事業所だ。新製エンジンの最終組立・出荷、修理エンジンの受け入れ・分解・検査・修理・組立・運転・出荷と航空機エンジン及びガスタービンのユーザーに直結する最終工程にある。「客先に最も近い工場と言える。それだけに信頼を得られるよう、品質第一に、納期厳守とTAT(ターン・アラウンド・タイム:整備期間)短縮を一層向上させるよう一丸となって取り組んでいる」と上東淳(うえひがし・あつし)工場長は瑞穂工場の特徴を語る。瑞穂工場は近年、民需においてはPW1100G-JMエンジンのモジュール新製組立およびエンジン整備が急速に増加し、防需においてはF-35A戦闘機用F135エンジンの最終組立が開始されたため、新たな整備棟を建設し、生産体制を整えつつある。
瑞穂工場はエンジンの組立・運転・修理のほか、ロケットエンジン用ターボポンプの組立、エンジン補機の組立・機能試験・修理、高性能20ミリ機関砲(CIWS)などの防衛機器の定期整備並びに要素技術・材料技術・制御技術などの研究開発・試験現場も所在しており、複合的な機能を持っている。ここに勤務している人員は生産要員だけでなく、営業、設計、開発、技術要員、関連会社社員、派遣社員を含めた人数で約2700名という。
PW1100G-JMとF135の導入で新棟を建設
テストセルも13基に増加
在日米軍横田基地の東側に隣接している瑞穂工場は、1961年に旧田無工場のエンジン試運転場(テストセル)を移設して分工場として発足し、1970年5月に事業認可を取得して正式に瑞穂工場として発足した。間もなく工場創設50年を迎える。航空エンジン関係では防衛エンジンの最終組立、定期整備を展開する東工場、民間エンジンの整備や部品修理全般を行っている西工場の他に、民間エンジンのモジュール新製組立と民間エンジンの整備を行う第6棟、そしてPW1100G-JMの整備専門工場として去る7月に第9棟が竣工した。また、F-35A戦闘機用F135エンジンの最終組立専用の南工場が建設され、稼働している。
今後、民需事業の一層の拡大に対応した新たな生産拠点の建設も検討されているが、当面は瑞穂工場に航空エンジン整備・修理の拠点としての施設整備が行われた。
新製、整備とも出荷前の運転試験が欠かせないのが試運転場(テストセル)だ。1961年に設置された最初のテストセルも現役で稼働しており、最新のF135エンジン専用を含めてターボジェット、ターボファン用のテストセルが合計7基、ターボプロップ、ターボシャフト用のテストセルが6基の合計13基のテストセルが整備されている。既存セルも改修を行い、運転試験の効率化や複数種類のエンジンへの対応などが実施されている。