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2018.07.16

海外教育旅行をアウトバウンド政策の柱に

 2018年の「観光ビジョン実現プログラム」では、「若者のアウトバウンド活性化を図るため、教育旅行の促進、地方空港のLCC等の国際線の就航促進、出入国審査の迅速化等を推進するとともに、旅行安全情報等に関する情報プラットフォー
ムを構築する」ことが明記された。
 最初に「教育旅行の促進」が謳われたことは評価できるし、注目される。このために、関係省庁が2019年度概算要求で、どんな施策にどれくらいの予算を計上するのか、注視しなくてはならない。
 例えば、小・中・高校生に対してはパスポート取得の優遇措置を検討すべきだ。グローバル人材、若者の国際化を謳いながら、省庁間の壁とか言って、最初から難しいとあきらめるところがこの国の体質だが、全くもって利用者の目線に立っていない。国の利益と国民の利益が相反していることをもっと訴えるべきだ。
 中国や韓国が小・中・高校生の海外教育旅行の質的な拡充に本腰を入れている。とくに中国では政府の後押しもあり、日本をはじめ米国、英国、台湾、シンガポールなどでより具体的な体験学習を実施しており、青少年の育成に海外教育旅行の促進が重要として、国や地方自治体をが積極的に奨励している。
 中国・天津市の小学校5校から179名の小学生が来日し、滋賀県琵琶湖周辺を訪問、琵琶湖水資源管渠保全学習を体験した。旅行は教育旅行を手がける天津市国際教育交流服務中心が主催した。
 日本側の企画立案者に聞くと、今年2月に北京の教育旅行コーディネーターから、「マンネリ化しつつある訪日教育旅行の打開策の改革案」についての相談があり、中国政府が再重要課題としている「水資源環境保全」の課題を企画して提出したら、天津市が評価して実現した。
 琵琶湖汽船による船内学習で担当者は、「中国の子供たちが熱心に聞き入り、積極的に質問するので、日本人小学生よりも反応が良かった」と複雑な表情を浮かべたという。
 日本側の関係者は、「こんなに多くの子供たちが来てくれるとは予想外。今後はこの市場を研究して強化したい」と、テーマを絞り込んだ中国からの訪日教育旅行を拡充したいとの声が相次いだ。
 中国の環境問題とマッチした琵琶湖水資源をテーマとする訪日教育旅行は継続的に実施する予定。日本側の企画立案者は、天津市で採用された企画を今度は、実際に湖沼河川の汚染を課題にしている中国都市への提案を検討しているという。
 環境問題は水資源だけではい、日本では高度成長期に大気汚染、化学汚染など多くの公害に直面してきた。経済成長期の中国では同様な問題を抱えており、教育旅行のテーマになりうるだろう。
 今回の企画立案者は、「訪日目的は『異文化体験』で、琵琶湖の環境保全も子供たちにとっては勉強になる異文化体験だった。日本各地に数多く存在する普通の資源が外国人には異文化となる。ただし、これらを活かすには住民の協力が不可欠」と指摘する。
 これは海外の教育旅行でも同様だ。通り一遍の修学旅行ではなく、テーマを絞り込んだ教育旅行をわが国も検討すべき時期に来ている。
 教育旅行というと、すぐに英語学習と結びがちだが、それは重要としても、その国、その地に行くテーマ性が最も重要ではないか。
 中国では、若者の海外旅行の促進は、子供たちの教育旅行から始まるとの認識が定着し、政府・地方自治体も助成している。韓国からの教育旅行も拡大しているという。
 小学生が教育旅行で海外を訪問し、別の文化を体験する。それによって、もっと海外を知りたくなる。それが若者の海外旅行につながり、各年代で海外旅行の増加に結びついていく。
 日本も制度を見直して、小学生からの海外教育旅行の促進を図るべきだ。今のままでは、若者のアウトバウンドで、アジア諸国と日本の格差はさらに広がっていくだろう。(石原)