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2018.09.10

トラベル懇話会創立40年

 トラベル懇話会が創立40周年を迎えた。今回刊行された「トラベル懇話会創立40周年記念誌」で、福田前会長が巻頭で書かれているが、トラベル懇話会が誕生した1978年は紆余曲折を経て成田空港が開港した年、その当時の海外旅行者数は350万人という。本格的な海外旅行時代を前に、トラベル懇話会は経営者層の勉強会として発足した。
 当時のことは知らないが、記念誌を読むと、日本旅行業協会(JATA)会長、三井航空サービス会長を務めた初代トラベル懇話会会長の本間次郎氏は設立に当たり「純然な勉強会で結論は出さず、圧力団体にもならない。会員のための会であり、会員が万難を排して自分が出席する(例会に代理出席は認めない。政府のような権力の介入を排する」を一貫した方針にしていたという。
 行政と旅行業界の関係性は他の業界と比べて希薄であることは、1997年に旅行業界を担当して最初に感じたことだった。前任の航空業界は行政との関係なくして存在しないような業界だったから、なおさら強く感じたのかもしれない。
 きっと当時の旅行業界は「行政の力を借りなくても生きていける」という独立心旺盛な気概があったのかもしれない。それを象徴するのがトラベル懇話会だったのだろう。
 トラベル懇話会は競合他誌が発起人で事務局を担当し、その雑誌の破綻後も他の競合誌が事務局を引き継いでいたこともあり、本紙との関わり合いは薄かった。
 その関係が深まったのは、西武トラベルの糟谷愼作氏が会長に就任された2002年以降である。その後、エヌオーイーの林田建夫氏、ジャルパックの二宮秀生氏、アサヒトラベルインターナショナルの福田叙久氏、風の旅行社の原優二氏と親交が続いていく。
 旅行業界の存在の高まりとともに、この40年間で、JATA、トラベル懇話会などの業界団体も注目を浴び、地位は向上したように思う。それでも、行政との関係を「圧力団体にならない。政府のような権力の介入を排する」方針を最も感じたのは、新春講演会で櫻井よしこ氏を登壇させたことだった。
 当然、氏は持論である中国に対する批判を展開し、日本の国会議員の「チャイナスクール」を糾弾した。ANTA会長を名指しで批判。講演会に来ていた中国国家観光局の東京首席代表も席を立った。こうなることは分かっていたと思うが、40周年記念誌を読むと、これがトラベル懇話会の「度量の深さ」なのかと思う。
 それから年を経て、2018年の新春講演会は菅義偉内閣官房長官だった。時の政権の中枢から在野のジャーナリストまで、右や左に関係なく耳を傾ける。そして、物言うときははっきりと言うのがトラベル懇話会の姿勢だ。
 創立40周年記念誌の中で、「国際観光旅客税の使途についての提言」を掲載している。提言は、①成人式にパスポートの無料配布、②若者の海外旅行応援基金(仮称)の創設③バランスの取れた双方向交流の実現④1週間連続休暇取得へ休み方改革の推進⑤観光産業を担う人材の確保の5項目。
 観光庁は2019年度概算要求で、一般会計として「相互交流の拡大に向けた若者の海外体験促進事業」として、新規に5000万円が要求している。観光庁は、双方向交流の促進に向けて、若者のアウトバウンド振興による国際感覚の涵養、人材育成に向けて、自己研鑽目的での海外旅行を「海外体験」と位置付け、その促進を図るモデル事業を実施する。
 9月4日付で新会長に就任した原氏は、トラベル懇話会の40年について、「自由に物を言い、切磋琢磨して勉強した歴史でもある。懇親を深め、懇話をし、切磋琢磨して業界全体を盛り上げていく」と抱負を語った。
 概算要求が通れば、2019年度からアウトバウンド施策に税金が投じられる。この機会を逃すことなく、トラベル懇話会がJATA、アウトバウンド促進協議会とともに、行政と軌を一にしてアウトバウンド振興に取り組むことを期待してやまない。(石原)