記事検索はこちらで→
2022.07.21

「ハワイ・オンライン・フォーラム」第2回 開催   

「リジェネラティブ・ツーリズム」を提議

ハワイ州観光局(HTJ)は、第2回目となる「ハワイ・オンライン・フォーラム」を6月30日にオンラインで開催した(協力:航空新聞社ウイングトラベル事業部)。地域の自然環境や文化、コミュニティに配慮し、観光を通じて地域を再生しようという「リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)」をテーマに、ハワイだけでなく、パラオやカナダといった他国の現状についても紹介したほか、いかに旅行商品に取り込むか、またいかに旅行者に意識してもらえるかなど、リジェネラティブ・ツーリズムを実践していく上での課題について議論した。

 

パラオ、世界に先駆けて「パラオ・プレッジ」を開始

 

 

 前半のプレゼンテーションでは、パラオとカナダ、ハワイにおけるリジェネラティブ・ツーリズムの状況について、それぞれの観光局が説明。パラオ政府観光局の芝村剛日本事務所代表は、201712月よりスタートした「パラオ・プレッジ」について紹介。これはパラオに入国するすべての旅行者のパスポートに押されるスタンプに、環境への配慮を呼びかける文書を記し、これに署名することで環境への意識を高めてもらおうという試みだ。

 パラオ・プレッジは、先進的な取り組みとして、世界的な賞を多く獲得。第5回「ジャパン・ツーリズム・アワード」においても観光庁長官賞を受賞し、高い評価を得ている。芝村氏は「パラオ・プレッジは、パラオに観光客として来てくださるお客様にパラオの自然と文化を一緒に守り、その美しく豊かな自然を未来の子供たちに残そうというキャンペーン」と説明した。

今後は自然や文化を打ち出すことで、ハイエンドマーケットや、高単価で環境にやさしいことを理解し、パラオでしか体験できないユニークな体験を求める層へのアプローチを強化していく。芝村氏は「数の多さを追求するのだけでなく、質的に満足度の高い滞在を提供する。観光産業の発展と、自然環境の保護という極めて微妙なバランスを取りながら100年後も今と変わらない美しいパラオでありたいと願っている」と語った。

カナダ、「レジェンダリー・エクスペリエンス」を提案

 

 

 カナダ観光局の半藤将代日本地区代表は、カナダにおけるリジェネラティブ・ツーリズムについて、「環境面、文化社会面、経済面でのサスティナビリティーを重視し、観光の力でその土地をより良い状態にして将来世代に引き継いでいこう、という取り組み」と説明。またリジェネラティブ・ツーリズムを実践できる体験として、「レジェンダリー・エクスペリエンス」を今後日本マーケットに訴求、旅行会社での商品化を求めていく考えを示した。

 レジェンダリー・エクスペリエンスについて、半藤氏は「カナダならではの本物の体験。その地域の人々が一番大切に受け継ぎたい本質的な価値を体験することで、結果として、リジェネラティブ・ツーリズムを実現していく」と説明した。

 半藤氏は例として、アルバータ州エドモントンでの経済的自立、伝統の継承にもつながる先住民観光や、バイソンの個体数を増やす取り組みを知る野生動物観賞、また持続可能な農業と漁業、美食体験を通じて地元コミュニティとつながるプリンス・エドワード島州での体験、オンタリオ州ナイアガラでの滝の浸食を防ぐ水力発電や黒人奴隷解放の歴史など、自然との共生や多様性について学ぶ体験について挙げた。

ハワイ、地元コミュニティの満足度を重視
旅行商品にいかに取り込むかが課題

 

 ハワイ州観光局日本支局長のミツエ・ヴァーレイ氏は、まずハワイがリジェネラティブ・ツーリズムに至った背景を説明。コロナ禍において、ハワイ州の観光戦略が大きく転換したことを挙げ、「私たちが住んでいる土地をどうやって次世代に残していくかという意識が大変強くなっている」と語った。
 この動きに基づき、ハワイ州の観光戦略においては、自然保全、文化継承、地域社会、ブランドマーケティングの4本柱を主軸に据える。重視するのは地元コミュニティの満足度だ。またハワイの各島で策定したデスティネーション・マネージメント・アクションプラン「DMAP」においても地元コミュニティが参画、例えば交通渋滞といったオーバーツーリズムによる弊害をいかに解決していくかなど、「島の新しい観光のあり方」を目指した内容となっている。

 こうした地元コミュニティに配慮した取り組みとしてヴァーレイ氏が挙げたのが、ハナウマ湾やダイヤモンドヘッドでの事前予約システム。「駐車場や入場料金の値上げなど、ある程度の規制や条例を設けて、うまく地域社会とのバランスをとっていく、というシステムが作られ始めようとしている」と説明した。

 観光局では、「マラマハワイ~地球にやさしい旅を~」をスローガンに掲げ、啓蒙活動に力を入れている。現地でもホテルやアトラクションなどの観光関連パートナーが、プラスチック製のボトルの廃止や宿泊するだけで植林活動に参加できるプログラム、また地産地消や社会貢献の体験ができるプログラムなどを提供する動きが強まっており、「地元コミュニティと旅行者をどうつなげていくか、新しい商品開発が次々と行われている」と語った。

 今後は、こうしたプログラムをいかに旅行商品に取り入れていくかが課題となる。6月上旬に実施した「ジャパンサミット」では、日本の旅行会社が現地で「マラマハワイ体験FAMツアー」を体験。ヴァーレイ氏は「どう情報提供、啓蒙活動していくか、どのようにプロダクト開発につなげていくか、ディスカッションを始めたところ」と説明。旅行商品だけでなく、教育旅行や団体旅行への提案なども進めていく。

 プレゼンテーションの最後には、ハワイ島で進む「ポノ・プレッジ」の動画を紹介。「ポノ」とは、ハワイ語で「善良」「道徳的な正しさ」「幸福」「道義をわきまえた」などの意味がある。自然環境や地元コミュニティに配慮した具体的な行動を促す内容で、ハワイ語を交えながら説明している。

 

次のページへ→