旅行会社との共同販促に注力【ブランドUSA】
ロングホールで「先頭に立つ」アメリカに
アメリカの観光プロモーション組織「ブランドUSA」は、海外旅行の本格的な復活、再開へ向け、旅行会社との共同販促など、アメリカ旅行の需要拡大に向けたBtoBのアプローチを強化していく。目指すはロングホール市場においてアメリカが「先頭に立つ」ことだ。日本事務所代表の早瀬陽一氏、旅行業界担当ディレクターの高久渉氏に話を伺った。
この2年間はウェビナーの開催やオンライン・プラットフォームを提供
ブランドUSAの運営は、アメリカ入国の際に必要なESTAの手数料で成り立っている。そのため、コロナ禍で海外旅行がほぼストップし、訪米者が減少すれば、その分ESTAの手数料も減少する。早瀬氏は「この2 年間は国際マーケット向けの予算が限られており、できる活動が少なかった」と振り返る。
この間、ブランドUSAでは、日本旅行業協会(JATA)のアウトバウンド促進協議会(JOTC)主催によるウェビナーに参画したり、また独自でもウェビナーを開催したり、さらに新たな取り組みとしてオンライン・プラットフォーム「グローバル・マーケット・プレイス」を提供、「コミュニケーションを絶やさないように努めてきた」という。
グローバル・マーケット・プレイスでは、オンライン上の「トラベルトレードショー」として、アメリカ各地の観光局やサプライヤーの担当者にアクセス、情報を得ることができる。一方、アメリカ側のサプライヤーも日本をはじめとする各マーケットの状況を知ることが可能で、いわば「日本とアメリカの業者間をつなぐ」役割を果たす。今後もこのグローバル・マーケット・プレイスは継続していく意向だ。
2億5000万ドルの予算投入 日本マーケットは増額、期待の表れ
今後の国際マーケットの復活、再開をにらみ、アメリカ政府はブランドUSAに対して新たに2億5000万ドルを予算に計上、2021年度(2021年10月~2022年9月)から適用し、2022年度(2022年10月~2023年9月)は最も多く配分される見通しだ。
早瀬氏は「これによりブランドUSAの予算はかなり戻ってくる」と説明。なかでも日本マーケットに対しては、「2022年度は、コロナ前の2019年度よりも多い。今年の10月以降は、積極的に動いていきたい」とのこと。
予算の増額はその分、日本マーケットへの期待の高さとも言える。「現地サイドでは、マーケットが必ず戻るという自信がある。コロナ前よりも予算増となった日本マーケットへの期待は高い」と指摘する。
3年ぶりにツーリズムEXPOに出展
11団体が参加、ブランドUSA担当者が来日
予算増を受け、今後の具体的な活動については、まず9月のツーリズムEXPOジャパンに「ブランドUSAパビリオン」として3年ぶりに出展。現在、州などの観光局やサプライヤー、ESTA事務局など、11団体が出展する予定だ。
出展について、早瀬氏は「今年から来年にかけての海外旅行の復活という状況において、今年のツーリズムEXPOへの出展はシンボリックな意味がある」と述べ、その重要性を強調する。今回はブランドUSAのワシントンDC本局担当者も来日する予定という。
共同販促でアメリカ本土への需要を喚起
費用対効果を重視、然るべきタイミングで
また夏から新たな年度となる10月以降、旅行会社との共同販促も今後本格化させていく。特にアメリカ本土への需要を喚起していく考えで、「流通の変化に合わせ、送客を期待できるパートナーと、できるだけ高い費用対効果が出る形で共同プロモーションを行っていきたい」(早瀬氏)と意欲を見せる。
実施するタイミングについても、航空便の回復状況、またロングホール市場の復活状況を見極めながら実施したいとしている。
対面セミナー、ウェビナーも 来年7月にはセールスミッション予定
対面によるセミナー、またはウェビナーも実施する。対面については航空会社と共同で予定。またウェビナーについては、JOTC主催のウェビナーに参加するほか、独自に「ゲートウェイ・ウェビナー」を8月末から6回に分けて実施する。
ウェビナーについて、高久氏は「まずは日本からの直行便が飛ぶゲートウェイ都市に焦点を当てた内容とした。原点に立ち返り、改めてゲートウェイ都市の魅力を訴求したい」と説明。
ウェビナーでは、1回あたり3つの観光局が参加する予定。需要の戻りが早いゲートウェイ都市に対象を絞ることで、需要を積み上げていく意向。また来年7月にはセールスミッションを計画。アメリカ各地の観光局、サプライヤーからの参加を募る。
IMAX新作「Into Nature’s WILD」
大自然にフォーカス、来春公開予定
一方、新しいIMAX®シアター向け映画の日本公開を来春に予定する。「Into Nature’s WILD(邦題未定)」は、2016年に日本公開した「アメリカ・ワイルド」、また2018年に日本公開した「アメリカン・ミュージック・ジャーニー」に続く第3弾。今回の作品は広い意味でのアメリカの大自然にフォーカスした内容だ。
映画「Into Nature’s WILD」について、早瀬氏は「ポストコロナで何を求めているか。サスティナブルや混雑を避けた旅行などを意識している」と紹介。なお、ツーリズムEXPOの期間中、旅行業界関係者を集めた上映イベントも予定している。
まずはリピーターなど、潜在性の高い層から
周遊旅行の販促も準備
今後の需要見通しについて、早瀬氏は「コロナ禍で溜まっていた“旅行に行きたい”という需要をまずはしっかりと獲っていきたい」と語る。
具体的には、円安や燃油サーチャージの高騰など、海外旅行へのハードルが高いなかでも旅行に行きたい層、例えばリピーターや富裕層など、まず来年初頭までの初期の段階として、「旅行する潜在性が高い層、結果が出やすい層」へのアプローチが重要との判断だ。
旅行スタイルについても、まずは「行きやすい1都市滞在」が主流との見通しを示す。「本来であれば、ブランドUSAはゲートウェイ都市の先のアメリカを宣伝する役割を担っているが、現状はまだまだ難しい」と指摘。
そのため現状としては、オンライン・プラットフォーム「グローバル・マーケット・プレイス」や、業界向けウェブサイト「ビジットUSA トラベル トレード ウェブサイト」にある旅行プランナーといったツールによるオンラインサポートを通じ、「市場が本格的に回復した際にしっかりと取り組んでもらえるようにしたい」とする。
ロングホールの先導的立場に
まずは土台作り、「売りやすい」アメリカに
目指すのは、今後本格的にロングホール市場の需要が回復した段階で、アメリカが「ロングホール市場の先頭に立ち、先導的な立場を担う」こと。その意味でも、リピーターや富裕層など、旅行をする潜在性の高い層の需要を積み上げ、「土台を作ることが重要」とのスタンスを示す。
早瀬氏は「アメリカは売りやすくて、親和性も高い。またチャンスも大きい」とアピール、旅行会社との共同販促をはじめ、さまざまな施策を通じ、積極的なBtoBサポートに専念してく意向だ。