ハワイ・ミクロネシアと共に
日本人の海外旅行を増やすには、日本の航空会社、旅行会社が頑張らなくてはならない。日本人の海外リゾートの代名詞であるハワイ・ミクロネシアの現状を見ると、その思いを強くする。
かつては200万人を超え、海外リゾートと言えばハワイだった。その後、アジアのリゾートが成長する一方で、需要の低迷が続いていたが、2016年、17年と2年連続してプラスとなり、17年の日本人旅行者数は150万人を超えて157万人を記録した。この数字は2000年の182万人に次ぐもの。
ハワイ州観光局(HTJ)によると、2018年の供給量は200万人を超えており、18年の日本人旅行者数は160万人をめざすという。その先にあるのは200万人。日本人海外旅行者数の目標2000万人の1割200万人がハワイ送客の目標となろう。
ハワイが低迷していた当時を振り返ると、日本の航空会社の経営環境の悪化と重なる。日系航空会社はリゾート路線の収益が悪化し、中には利用率100%でも赤字の路線もあった。例えば、JALはリゾート路線のコストを削減するため、リゾート路線を運航するジャパンエアチャーター(のちにジャルウェイズ)まで設立した。
今にして思えば。、JAL本体の経営改革が必須で、別会社設立は付け焼き刃と言わざるをえないが、こうしなければ、運航が難しいほどの不採算リゾート路線だった。
JALが経営破綻から再建を果たし、ANAも国際線事業を拡大する中で、訪日インバウンド市場の成長がそれに大きく貢献している。一方で、アウトバウンド市場としてのハワイの復活が、国際線レジャー市場の中核として注目されている。
ANAは2019年からホノルル線に超大型のエアバスA380型機を導入し、ハワイ需要の拡大を図る。JALは関西−ホノルル線を来年3月30日まで1日2便に増便する。JALはハワイアン航空(HAL)と提携し、自社の成田−コナ、HALの羽田−コナのコードシェアリングなど、ハワイ島など隣島需要の開拓を図る。エアアジアX、スクートも関西−ホノルル線に就航し、高価格帯から低価格帯まで、ハワイの多様な需要に対応する。
ANAとユナイテッド航空(UAL)の共同事業、JALとHALのコードシェアリングなどの提携効果も大きいが、日本の航空会社がハワイ路線を観光市場の中核に位置づけて、投資することが日本の海外旅行需要を拡大することになる。
その一方で、対照的なのがグアムとサイパンの現状だ。グアムは2013年以降、減少傾向にあり、2017年の日本人旅行者数は1-11月で前年比15.9%減の57万1589人。9月以降は北朝鮮ミサイル問題も影響し、2-3割台で減少した。
サイパンのある北マリアナ諸島への日本人旅行者数も2017年は前年比16.5%減の5万944人で、最盛期は年間50万人近い日本人旅行者を訪れていたが、大幅に減少した。
グアムへの日本人需要の低迷を受けて、DALは1月で成田線を運休した。UALも1月で新千歳線を運休、仙台線を4月1日から運休、関西線、名古屋線を3月27日から現行の1日2便を1日1便に減便する。さらに、成田−グアム線の機材を小型化する。
また、DALはゴールデンウィークが終わる5月6日で、成田−サイパン線、成田−パラオ線を運休する。これにより、DALは日本−ミクロネシア線から撤退する。
グアム、サイパンへの需要低下もさることながら、米国内線が堅調な米系航空会社は、機材を国内線に振り向けることも運休の背景にあるとみられる。
それでもグアムの日本人需要は戻りつつあり、JALは3月25日から成田−グアム線を1日2便に増便する。サイパンへもチャータ便を商品化したい。
グアム、サイパンのミクロネシアは、日本の航空業界、旅行業界、日本人が育んだ海外リゾート市場と言っても過言ではない。ハワイとともに、日本から一番近い海外リゾート、ミクロネシア市場の再建は旅行業界の課題である。(石原)