業界挙げてグアム需要回復を
今年の10月までの日本人海外旅行者数は、日本政府観光局(JNTO)によると、前年同月比4.9%増の148万7800人だった。10月が0.1%増とほぼ横ばいだったことで、1800万人超えには5.2%増の伸びが必要で、11、12月の伸び如何に掛かってきた。
方面別の旅行者数の伸びを見ると、香港15%増、マカオ12%増と、香港・マカオが好調に伸び、東南アジアではタイ6%増、フィリピン11%増、ベトナム8%増と堅調に推移している。加えて、ヨーロッパが回復基調にあり、スペイン、ドイツ、フランスなどテロの影響から脱してきた。供給増が続くハワイは7%増、オーストラリアも6%増とプラスを維持している。
一方で、北朝鮮のミサイル問題の影響を受けたグアムは、9月33%減、10月38%減と一挙に3割以上落ち込み、1-10月は15%減までダウンした。
また、1-3月は前年からの好調を維持して大幅なプラスを続けた韓国は、4月以降マイナスに転化し、9月は5%増と回復したものの、北朝鮮問題が尾を引いているためか、10月は2割以上減少した。
インドネシア・バリ島も8月までは11%増で、とくに7月33%増、8月37%増と3割以上の伸びを示していたが、11月のアグン山の噴火で、一挙に冷え込み、年末年始の予約状況にも大きな影響を与えている。
全体の海外旅行者数が微増になった要因は、日本の主要デスティネーションの1つであるグアムの急減が最大の要因とみられる。こうした政治問題やバリ島のような天変地異は、マーケティングやプロモーション活動ではどうにもならない。こうした外的要因からの早期の需要回復策は、業界全体で克服すべき課題であろう。
グアム政府観光局(GVB)は、日本−グアム間就航50周年を記念した「グアム・メガ・ファムツアー」を開催、全国から旅行会社、メディア、インスタグラマーなど約400名が参加し、セミナーやワークショップ、現地視察など盛大に行われた。その狙いは、北朝鮮問題からのリカバリーにある。
グアムへのメガ・ファムと軌を一にして、日本航空(JAL)は、来年3月25日から10月27日までの夏期スケジュールに期間限定で、成田−グアム線を1日1便増便し、ダブルデイリー化することを決定した。
グアム政観のジョン・ネイサン・デナイト局長兼CEOは、「来島者数に直結する航空座席の供給対策を重要課題として取り組んだ結果」と述べ、増便を決めたJALに対して、感謝の意を表明した。
旅行会社も日本−グアム就航50周年記念ツアーをJTB、HIS、KNT-CT、日本旅行、ジャルパック、東武トップツアー、楽天トラベルが販売するほか、グアム政観が新聞及びオンラインでの広告展開を行っている。
米軍の主要基地があるグアムは、全米でも最も安全なデスティネーションの一つで、それは今も全く変わらない。しかし、あの北朝鮮の声明だけで、教育旅行・団体旅行がキャンセルされ、日本人旅行者が一挙に落ち込むというのは実に理不尽だ。
もし、北朝鮮の声明がグアムではなく、沖縄だったら、訪日外国人旅行が大きな影響を受けたことは想像に難くない。物事を短絡的に捉えずに、もう少し冷静な判断を求めたいところだ。
日本人の場合、感染症、テロ事件、天変地異などからの需要回復に、どうしても時間がかかる。欧米などは3カ月程度で需要が戻るが、日本の場合は回復に1年を要するとよく言われる。
フランス観光開発機構のフレデリック・マゼンク在日代表も最近の日本人旅行需要の回復について、他の諸国と比べると、どうしても時間がかかることを指摘していた。
日本旅行業協会(JATA)はテロ事件でフランスはじめヨーロッパへの日本人旅行需要が低迷した時は、いち早く行動して需要回復に努めた。同様に、グアムへの日本人旅行需要の回復に全力を挙げて取り組むべきだ。(石原)